第217話 期間従業員日記(12)

文字数 1,032文字

 GWも明けて、ぼくの持ち場も「ショートブロックサブ」から「メイン組付2」へ変わった。ぼくの持ち場だった「インマニ」がメイン組付に移動したので、機械と一緒に作業者もペアで移動となったのだ。

 8年も期間従業員をやっていれば、なんだか知ってる人も多い。新しい職場はもちろん緊張もするけれど、「かめちゃん」と呼んでくれる上司も何人かいてくれて、要するに全く知らない人たちばかりでないのはありがたい。
 さらに言えば、けっこういい人がいてくれるのが、ほんとうにありがたい。
 不良品を出さぬよう、とにかく不良品を出さぬよう、細心の注意をもって作業をしていきたい。

 さて、5月は新入社員が現場に入ってくる時期である。
 人事異動も、ちょこっとあったりする時期である。(些細な、単なる職場が変わるといったモノですが。)
 みなさん、ほんとにいろいろ大変なこともあるかもしれないけれど、何と言っても不良品を流してお客さんに悲しい思いをさせぬよう、仕事をしているときは仕事第一でやっていって下さい。

 ところで、ぼくの新しい職場での「インマニ」は、ビニールハウスのような形状をした「クリーン・ルーム」の中での作業と相成った。ここだけエアコンも付いていて、スポット・クーラー(ジャバラ式の送風口が天井あたりから伸びているモノ)もあるし、蒸し暑かった今日でも涼しいくらいな環境。(他の工程の人たちは、暑い暑いと言っていた)でも、作業内容はハンパじゃなかった。

 つまり、今まで2人でやっていた「インマニ」工程だが、ぼくひとりでやることになっているのだ。労働密度が濃くなったのもあるが、これは、なかなか孤独である。(なんで重要工程をひとりでせにゃならんの)
 滅菌室のようなビニールハウスで、ひとりぽっちの作業。パチンコ屋の景品交換所のような窓口に、できあがったインマニを置く。それを、エンジン自体が流れてくるラインの、次工程の作業者が取って、エンジンに組み付けていく。

 今日は工程変更初日とあって、ぼくのところ以外でも変更があったので、けっこうラインも止まっていた。インマニ工程も、ひとりでは絶対的にムリな作業能率上の問題があって、ずっといつも笑顔の上司がぼくと一緒に作業をした。
「かめちゃん、正社員にはならんの?」
「いや、ぼく、期間従業員でいっぱいいっぱいです。もう、ギリギリっす。」
「あははは、いっぱいいっぱいかぁ。」
 てなことを話しながら、作業。
 そう、いっぱいいっぱいなんです、わたしは…。
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