第771話 やさしさと愛

文字数 228文字

相手が熱湯を足にこぼしてしまった。
相手は火傷をした。

それを見ていた「ぼく」は、相手からそのヤカンを取り上げた。
そして自分の足に、相手がこぼしたのと同じように、熱湯をわざとこぼした。

この「ぼく」は、椎名麟三の小説の主人公だ。

相手の痛みを、知るということ。
精一杯、近づくこと。

「相手を変えようとするのではない。自分が変わるのだ。それが愛だ」と云ったキルケゴールの言葉と、被る気がする。
 少なくとも、この主人公は自分から火傷をした。相手の火傷に、薬をつける前に。
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