第589話 教える立場

文字数 468文字

 今月いっぱいでぼくは期間満了退社するので、ぼくの仕事を引き継ぐ人に、仕事のやり方を教えている。
 ちょっと大変である。
 教わるより、教えるほうが大変であることは、知っていた。

 ぼくの仕事内容は、けっこう労働密度が濃いので、彼は今日、したたかに手を痛めた。
「Aさん、もっと腰を落として、ヒザ曲げてやったほうがいいです。でないと、手を痛めますよ。」
 言っても、聞かない。
まぁでも、自分なりの仕事のやり方でやりたいのだろうから、そのままにしておいている。

 口の達者な人は、仕事の達者と反比例する、とは、よく聞いていた話だけど、これがフィットしてしまう。
「かめさん、ぼくが言うこと聞かないでムッとしてるでしょうけど、見捨てないで下さいね」「ここが遅いんだな、ぼくは」「あれですね、あれがああだと、ここがこうですね」
 実によくしゃべる。ぼくは苦笑いするしかない。つくり笑いでも、笑うことは癌の予防になるらしいから、その点では助かっている。

 でもAさん、シゴトをナメてはイケナイよ。
 自分のやることは、しっかりやろうよね。
(エラそうだなー、オレ。)
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