第253話 期間従業員日記(27)

文字数 668文字

 夜中に何回も目が覚めた。
 汗が沁み込んだパジャマを着替える。パジャマの在庫がなくなり、長袖Tシャツとパンツ一丁に着替える。布団に潜り込む。布団も毛布も湿気を帯びている。

 完璧に風邪を引いたのは久し振りである。
 背中が固く、痛い。腰も太もももスネも、重い。タバコを吸うと、ノドの熱を帯びた急所にケムリが降りかかるのが分かる。
 左の眼のまわりがピクピクと痙攣する。両足の裏にひとつずつできているウオノメが大きくなっている。歩くたびに痛む。
 右手首がけんしょう炎っぽい。肩のこりもピークだ。

 今日は休みたいナ。まぁ行くだけ行くか。
 通勤バスの中でずっと眠っていた。目が覚めたら工場に着いていた。
 まいったなぁ、と思いながら仕事が始まる。
 まいったなぁ、と思いながら午前中が終わる。
 昼食。
 午後、もうイヤになった。ツライ。やってられるかよ。
 20秒くらいそう思った。もうどうでもいいや、と何かをあきらめた。自然と何かがフッ切れた。すると、ぼくの中には心も何もなくなって、身体はただ素早く動くだけのマシンになった。

 残業の30分も終わった。あとは帰るだけ。
 今回の風邪の原因は分かっている。寝不足である。
『チャンと寝てくれないから…』
 身体さんが云っている。
『タバコ吸いすぎよ』
 肺さん。
『飲みすぎだよ』
 肝臓氏。
『早く病院で取ってもらいな』
 ウオノメくん。
『脳神経科が先よ』
 顔面神経痛嬢。
 ぼくは自分の身体のあちこちから不平を言われている。
 まぁでも、今日1日、もってくれてありがとう。
 40年も生命やってたら、そりゃ君たちも大変だわな。
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