第211話 「トヨタの常識は世間の非常識。」

文字数 1,005文字

 これは、去年の夏に第2エンジン製造(V8ライン)へ応援に行っていた時、上司から聞いた言葉である。
 こういうことを言える人だから、ほんとにい上司であった。

 ひとを、分け隔てしないのである。
 期間従業員だろうが正社員だろうが派遣社員だろうが、どんなひとに対しても、同じようにニコニコと接していた。
「人柄がいい。」この言葉は、この人のためにあるのではないか、というほど、ほんとうにいい上司だった。

 職場の根本的な空気をつくるのは、上司の影響がなんだかんだとある。
 差別的な上司だと、その下の正社員たちも差別的になる。
 だがこれも考え方で、ああ、オレは期間従業員なんだから、そんなマジメに働かなくていいんだ、という気楽さを強固にさせてくれる利点(?)もある。

 でもね。せっかく同じ職場で働いているんだから、仲良くやりたいじゃん、と思ってしまう。どうせ働くんだから、きっちり仕事したいじゃん。

「ここで働いたら、どこの会社に行ってもつとまります。」
 よく聞く言葉なのだけど、これは嘘である。
 ここで働いて、その水に慣れてしまったら、社会人失格になります。
 ひとへの気配りができなくなります。
 自分のことしか考えられない人間になります。
 エゴのかたまり。ご都合主義。我が身第一。
 でもこれも考え方で、人間不信になることができるようになるから、最初から防御壁つくってしまえば、ひとから傷つくこともない、という。

 ぼくのいる今の職場では、挨拶をしない人が圧倒的に多い。
「おはようございます」と休憩所に入ってきた人に、挨拶を返すのは、期間従業員の3名だけ。(返してます、ぼくも。)あとの10名位はシカトである。

 新しい期間従業員に仕事を教える正社員は、「あいつは覚えが悪い。」
 おいおい、傍から見てて、その教え方じゃ、覚えるもんも覚えられねーよ。
 でも本人は自分を省みない。そりゃ相手のせいにしてしまえば自分はラクだわな。

 うん、不良品、出るね。それが当然だわ、この体制じゃ。
 リコールもどんどん出しなさい。
 儲かってる代価を、自業自得、お払いあそばせ。

 さて、ぼくはゴールデンウィーク明けから、現在の職場の隣りの職場へ移ります。けっこう話をしたり、知ってる人も少なくないので、ひそかに楽しみ。
 第2エンジン製造のあの職場で、あの上司のもとで働きたいけど。
 ほんと、あの人のもとだったら、どんなつらい仕事でもやりたい、って思う。
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