花方 6
文字数 596文字
鵠が手にしていた夜光杯は黒瑪瑙の頭に弾き飛ばされて空を舞った。
燭台の灯りに照らされて、一瞬煌めいたソレを見失うまいと視界に納め、必死に駆けた。
身体が重い。
間にあうか?
いや、間にあえ!
床に落ちる前に、ソレを回収しなくては!
落ちて割れてしまったら、鳰は……
っああ!
滑り込むようにして必死に左手を伸ばした。
丹く燃える俺の左手。
のめ!
丹い光が夜光杯を包んだ。
遠仁を吞むがごとくに俺の手に引き込む。
指に触れた。
必死につかんだ。
頭上で、黒瑪瑙の頭が雄叫びを上げる。
上から何かが降ってきて、俺の背骨がミシリと音を立ててへしゃげ、体が床に叩きつけられた。
「かはッ!」
ゴボリと音を立てて、俺の口から血反吐が飛び出した。
だがコレは!
コレだけは守らなくては!
左拳を握り込んで右手で包むと、夜光杯を胸に抱き込む。
鋭い鉤爪が顔の左半分を蹴飛ばし、俺はもんどりうって転がった。
その時、今までどこを流離っていたのか、落とした頭から離れた石が俺の右手首に集まった。
玉の緒に集った石が眩しい程の光を放つ。
掌に握った夜光杯が黒瑪瑙製であることに初めて気が付いた。
辺り一帯が光に照らされ、黒瑪瑙の頭が首をよじって金切声を上げる。
そうか、光が……苦手であったな。
鸞と波武が頭に襲い掛かった。
ああ、これで終いだ。俺は目を閉じた。
燭台の灯りに照らされて、一瞬煌めいたソレを見失うまいと視界に納め、必死に駆けた。
身体が重い。
間にあうか?
いや、間にあえ!
床に落ちる前に、ソレを回収しなくては!
落ちて割れてしまったら、鳰は……
伯労の二の舞になってしまう
!っああ!
滑り込むようにして必死に左手を伸ばした。
丹く燃える俺の左手。
のめ!
丹い光が夜光杯を包んだ。
遠仁を吞むがごとくに俺の手に引き込む。
指に触れた。
必死につかんだ。
頭上で、黒瑪瑙の頭が雄叫びを上げる。
上から何かが降ってきて、俺の背骨がミシリと音を立ててへしゃげ、体が床に叩きつけられた。
「かはッ!」
ゴボリと音を立てて、俺の口から血反吐が飛び出した。
だがコレは!
コレだけは守らなくては!
左拳を握り込んで右手で包むと、夜光杯を胸に抱き込む。
鋭い鉤爪が顔の左半分を蹴飛ばし、俺はもんどりうって転がった。
その時、今までどこを流離っていたのか、落とした頭から離れた石が俺の右手首に集まった。
玉の緒に集った石が眩しい程の光を放つ。
掌に握った夜光杯が黒瑪瑙製であることに初めて気が付いた。
辺り一帯が光に照らされ、黒瑪瑙の頭が首をよじって金切声を上げる。
そうか、光が……苦手であったな。
鸞と波武が頭に襲い掛かった。
ああ、これで終いだ。俺は目を閉じた。