堕ちた片翼 4
文字数 697文字
先ほどの音の所為だな。
俺は足元の砕けた湯呑に視線を落とした。
「鳰、すまぬ。湯呑を割ってしまった」
声を掛けると、鳰は戸口から顔をのぞかせた。
俺らに面を向け、湯呑に向いてからいそいそと室内に入ってくる。左手に屑入れを持ち、割れた破片を拾い始め、俺が腰を上げると、手で制した。
(お怪我はなさいませんでしたか? 白雀殿の
柔肌
では危のうございますので、ここは私が)俺のどこが
柔肌
だって? まぁ、鳰の作り物の手よりは柔らかいかもしれぬが、相変わらず言い方がひどい。小莫迦にしている。「手間をかけたな」
言い返したい気持ちをグッとこらえて、ここは労うだけに留めた。
「よくできたカラクリだな。さすがは煉丹も修める
屈んでいる鳰の背を見ながら、
いや……、と言いかけた俺を、また鳰が制す。
(色々と面倒くさいので、カラクリだと思わせておいてください)
湯呑の破片を拾い集めた鳰が、立ち上がって踵を返す。
鷹鸇がふいと目配せしたかと思ったら、鳰が派手に転んだ。
手にしていた屑入れが飛び、中身の破片がカラカラと音を立てて転がる。
「あっ……」
慌てて立ち上がり、鳰を助け起こした。
目の端で鷹鸇の足がするりと引っ込んだのが見えた。
貴奴、鳰に足を掛けおった!
奥歯をギリッと噛みしめたのを鳰に気取られた。
(ここは納めてくださいませ。私は、大丈夫です)
倒れた屑入れから飛び散った欠片を再び拾い集め、鳰は部屋から出て行った。
「案外と足元は暗いのだな」
鳰が出て行った扉を見つめ、独りごちた鷹鸇をぶん殴って遣ろうかと思った。殊勝なことを言ってもやはり貴奴、