業鏡 1
文字数 694文字
「私は、
「確かに、始末をつけよとは言われてはおらぬ。だが……鳰があのままで良いとは思えぬ。どこにいるどの遠仁が鳰のどの部分を持っているのか、夜光杯がどこにあるのか、何一つわからぬ状況で、どこから手を付けたらよいモノやら正直、俺も判らぬ。しかし、いつまでも手を
「ううーむ」
阿比は虚空を睨んで唸ると、伸ばし放題の黒い総髪を一房取って指でクルクルと捻った。
「幸い、俺はどこにも属してはおらぬ。阿比のように、人から頼られる
俺なら
、遠仁が分かる
。昨夜のように退治すれば、引き換えに鳰の体を回収することが出来よう」「貴殿がそこまで業を背負い込むことは無いのではないか?」
「……他に、……いかような甲斐があるというのか」
「………」
阿比は、スンと黙って動きを止めた。
「俺は、もう死んだも同じであった。『丹』が無ければ拾わなかったかもしれない命なら、悔いを覚えぬほど『丹』を使いつくしてやりたい」
「……そこまで言うのであれば、もう何も言わぬ。好きにせよ」
阿比はくるりと踵を返した。
「私はこの国と周辺を回っておる。何か、心を留めることがあれば知らせよう」
「かたじけない。恩に着る」
俺が頭を下げると、阿比は懐手にしてチラリと振り向いた。
「『