伏魔の巣 8
文字数 536文字
穏やかに座している鵠 殿の周囲に暗黒の靄 が立った。
「血の匂いに誘われて来たな」
鵠殿は淡々と言った。
この遠仁は……鵠殿には、折り込み済みのもの?
とすると、鵠殿は……。
「『丹』の力が引き出せぬのであれば、
遠仁が、国主殿の……眷族?
黒い靄が掌を広げたように迫ってきた。
これ……は、デカい。
俺は自分の左手を押えた。
熱い。
熱い……火にあぶられるようだ。
網の目の傷跡が次第に丹い光を帯びて、ぬらぬらと息吹を取り戻した。
ほう、と、鵠殿が初めて表情を動かす。
期待を込めた眼差しを向けて、それは愉しそうにこちらを見つめている。
俺は……どうしたらいいんだ。
これを、喰うのか?
さすれば、俺が何ができるようになってしまったのか
披露してしまうことになる。
そうしたら、俺はどうなるんだ?
だがこのまま肉を喰われてしまったら、俺は遠仁になってしまう。
鳰に肉を取り戻すことなど永久にできなくなる。
どうすれば……。
「存分にふるまえよ。吾 が殿 持ちをしてやろう」
ぞわりと鳥肌が立った。
死の瀬戸際で聞いた声だ。
あの、獣の……。
すぐ脇に降り立った気配は……。
「え…………波武 ?」
「血の匂いに誘われて来たな」
鵠殿は淡々と言った。
この遠仁は……鵠殿には、折り込み済みのもの?
とすると、鵠殿は……。
「『丹』の力が引き出せぬのであれば、
失敗
であるな。折角拾った命だが、仕方のない。せめて贄となりて我が眷族の一翼となれ」遠仁が、国主殿の……眷族?
黒い靄が掌を広げたように迫ってきた。
これ……は、デカい。
俺は自分の左手を押えた。
熱い。
熱い……火にあぶられるようだ。
網の目の傷跡が次第に丹い光を帯びて、ぬらぬらと息吹を取り戻した。
ほう、と、鵠殿が初めて表情を動かす。
期待を込めた眼差しを向けて、それは愉しそうにこちらを見つめている。
俺は……どうしたらいいんだ。
これを、喰うのか?
さすれば、俺が何ができるようになってしまったのか
披露してしまうことになる。
そうしたら、俺はどうなるんだ?
だがこのまま肉を喰われてしまったら、俺は遠仁になってしまう。
鳰に肉を取り戻すことなど永久にできなくなる。
どうすれば……。
「存分にふるまえよ。
ぞわりと鳥肌が立った。
死の瀬戸際で聞いた声だ。
あの、獣の……。
すぐ脇に降り立った気配は……。
「え…………