遠仁の憑坐 1
文字数 878文字
施療院の診察室では、女物の着物にまかれた
「本体は、子どもの方だったのだな」
梟の
「落ち着いているな……」
俺は、阿比の胆力に感心して呟いた。
「ふん。
阿比はこともなげに鼻で笑った。
振り返ると、
鳰は無事であったか……。
俺はホッとした。
阿比が話を続ける。
「魂は
ガワごと
「それを、俺の仙丹が喰うとは……どういうことだ?」
俺は自由に動くようになった己の左腕を見た。
もう、あの熱は引いていた。
手の平を
それは……と梟が語りだして、俺は目を向けた。
己の身体をさすりながら、梟は言った。
「『丹』は不死不滅の薬とも言われているが、人体との親和性が薄いため定着が難しい。それ故に仙丹の触媒に、鳰の脳と右目を覆っていた膜の一部を使った。バラバラにされても生命を保つことのできる特殊な膜をだ。だがそれを使って『丹』を定着したことで思わぬ作用も発揮されてしまったらしい」
「……つまりは、俺に埋め込まれた『丹』が『遠仁』を欲していると?」
「そうじゃ。『丹』の作用については、実のところ全てが明らかになっているわけでは無い。
なんだそれは?
よくわからん。
動かなかった左腕を動かせるようになったのも不思議なことだ。
「それにしても……」
俺は先程の顛末に怖気をふるった。
「遠仁を取り込むたびに、あんな苦しい思いをしなくてはならぬのか?」
己の口内から吐き出されたおぞましい百足の姿を思い出す。
「さあ、それは分らぬ。先程のモノは、己の屍を喰ろうていた虫に憑いた遠仁だったのかも知れぬな」
シレッとぬかす阿比に、俺は恨みがましい目を向けた。