伏魔の巣 10
文字数 626文字
「どこに……行くのだ?」
突き上げてくるモノを必死に抑え込みながら、跳ね上がるように駆ける波武に問うた。
「この世で最もキレイなところさ」
波武は
多分、城下のどこかを駆けているのだと思うが、周囲の景色は水のごとく流れ、今どこをどのように移動しているのか判らない。それでも、取り巻く風が土埃の臭いから草いきれにかわり、城下を抜けたことはわかった。
やがて、湿った土の臭いとヒヤリとした風が纏いつき、どこぞの森に入ったと知れた。
「ほれ、着いたぞ」
その時には俺の吐き気はもはや限界だった。
背中から転がり落ちるようにして地べたに
苦しいは苦しいが……。
俺は咳込みながら思った。
塊を吐くよりはマシだ。
だが、今回は中身を吐き終えてもムカつきは落ち着かなかった。
我慢しすぎた所為か。
「すっきりしたか?」
「まだ……ムカムカしやがる」
こんなになるんだったら、波武の背でぶちまけてやればよかったか? 恨みがましい上目で波武を見やると、波武の背越しに純白の花も麗しい見事な樹木が見え、俺は言葉を失った。
「ここは……どこだ?」
「沙羅の