麦踏 8
文字数 676文字
寝所から梟がニコニコしながらでてきた。
「2人ともはしゃぎ過ぎだ」
夕餉の支度もそこそこに船をこぎ出した2人を見かねて、ちょっと休んで来いと促したらそこから2人とも爆睡らしい。
まぁ、昨夜は夜明ししたのでちょっと時計が狂っているのであろう。鸞はともかくも、鳰は可愛いもんだ。
「適当に雑炊でもこしらえておこう。大したことはしないので手伝いは要らんぞ」
そう言って、梟は厨 に引っ込んだ。
俺と阿比、波武だけ部屋に残された。
「阿比殿は、『碧き湖沼』のあたりへ行ったことはあるか?」
「いや。あそこは立派な屋代がある。私のような流しの謳いは必要とされない」
「……そうか」
俺も話には聞くが行ったことは無い。
「あそこが、どうかしたのか?」
「……うむ。もしかすると、鳰と関係のある人がいるのかもしれぬと思うて……」
俺の言に阿比は首を傾げた。
『碧き湖沼』は別荘地。高位の役人や豪商が、夏の間に過ごす別宅が居並んでいる。それぞれの屋敷は閉鎖的で、出入りの商人くらいしか訪うことは出来ないらしい。訪れたところで積極的に情報を探るようなことは難しいだろうが……。
「いずれかの屋敷に狂女が囲われているという噂を聞いて居るのだが……。もしかすると『イリエ』という言葉に関係があるかもしれぬ」
「イリエ、ねぇ……」
阿比はますます怪訝な顔をした。
そうか……屋代があるのか……。
思案しつつ、横目で波武を見た。
知らん顔して目を閉じて寝そべっている。
何故、あんなに惚けるのか。
余計に「黒である」と証明しているようなものではないか。
鸞と波武は、一体何を隠しているのだろう。
「2人ともはしゃぎ過ぎだ」
夕餉の支度もそこそこに船をこぎ出した2人を見かねて、ちょっと休んで来いと促したらそこから2人とも爆睡らしい。
まぁ、昨夜は夜明ししたのでちょっと時計が狂っているのであろう。鸞はともかくも、鳰は可愛いもんだ。
「適当に雑炊でもこしらえておこう。大したことはしないので手伝いは要らんぞ」
そう言って、梟は
俺と阿比、波武だけ部屋に残された。
「阿比殿は、『碧き湖沼』のあたりへ行ったことはあるか?」
「いや。あそこは立派な屋代がある。私のような流しの謳いは必要とされない」
「……そうか」
俺も話には聞くが行ったことは無い。
「あそこが、どうかしたのか?」
「……うむ。もしかすると、鳰と関係のある人がいるのかもしれぬと思うて……」
俺の言に阿比は首を傾げた。
『碧き湖沼』は別荘地。高位の役人や豪商が、夏の間に過ごす別宅が居並んでいる。それぞれの屋敷は閉鎖的で、出入りの商人くらいしか訪うことは出来ないらしい。訪れたところで積極的に情報を探るようなことは難しいだろうが……。
「いずれかの屋敷に狂女が囲われているという噂を聞いて居るのだが……。もしかすると『イリエ』という言葉に関係があるかもしれぬ」
「イリエ、ねぇ……」
阿比はますます怪訝な顔をした。
そうか……屋代があるのか……。
思案しつつ、横目で波武を見た。
知らん顔して目を閉じて寝そべっている。
何故、あんなに惚けるのか。
余計に「黒である」と証明しているようなものではないか。
鸞と波武は、一体何を隠しているのだろう。