序 2
文字数 568文字
俺は半農の貧しい下級士官の四男坊だった。
兄二人は仕官していたが、大分前にスズメの涙程の恩給と共に帰ってきた。姉は隣村へ嫁ぎ、家には家督を継いだすぐ上の兄と、弟が一人いた。
先の戦で隻腕 となった父は、名ばかりの昇級と引き換えに退役し、母と共に畑仕事に明け暮れる日々を送っていた。兄と俺は、仕官してそれぞれ別の部隊に籍を置いていた。
貧しいながらもまぁ何とか暮らしていたが、先の冷夏でここら一帯の作高がガクンと下がった。国内の市場は一気に物が不足し、日々の糧にも困窮する有様となった。
隊の中でもそこそこ腕は立つ方だと自負していた俺だったが、所詮それは不測も想定内の整えられた環境下で手合わせをしてこそ生きたもの。戦場の無差別乱打の渦中にあって、思惑通りに行くわけもなく。腕に任せて深入りしたがために撤退の機を逃した。
思わぬ反撃にあって敵陣の中、身動きが取れなくなっていたところを、間一髪、味方の騎馬に拾われた。
何故、あそこで救われてしまったのだろう。騎手は見知らぬ者であった。仮に自陣に戻れたとて、直ぐ復帰できるような程度の手負いではないことは判っていた。一矢報いて露と消えるのもまた、悪くなかったのではないか。
兄二人は仕官していたが、大分前にスズメの涙程の恩給と共に帰ってきた。姉は隣村へ嫁ぎ、家には家督を継いだすぐ上の兄と、弟が一人いた。
先の戦で
貧しいながらもまぁ何とか暮らしていたが、先の冷夏でここら一帯の作高がガクンと下がった。国内の市場は一気に物が不足し、日々の糧にも困窮する有様となった。
上がり
が悪くて窮した国主は、ここより幾分か状態の良かった隣国へ攻め入ることにしたらしい。兄も俺も従軍することになった。隊の中でもそこそこ腕は立つ方だと自負していた俺だったが、所詮それは不測も想定内の整えられた環境下で手合わせをしてこそ生きたもの。戦場の無差別乱打の渦中にあって、思惑通りに行くわけもなく。腕に任せて深入りしたがために撤退の機を逃した。
思わぬ反撃にあって敵陣の中、身動きが取れなくなっていたところを、間一髪、味方の騎馬に拾われた。
何故、あそこで救われてしまったのだろう。騎手は見知らぬ者であった。仮に自陣に戻れたとて、直ぐ復帰できるような程度の手負いではないことは判っていた。一矢報いて露と消えるのもまた、悪くなかったのではないか。