拾われたもの 6

文字数 363文字

 ヒトは死すると「魂」と「肉体」に分かれると言われる。

 「魂」は「久生(くう)」と呼ばれる神に、
 「肉体」は「尸忌(しき)」と呼ばれる神に喰われるとされる。

 「久生(くう)」は天上神にて変幻自在。
 「尸忌(しき)」は地上神にて鳥獣の姿をする。

 ヒトが亡くなると「(うた)い」と呼ばれる者が「久生(くう)」を呼んで「魂」を召していただき、「魂」が抜けた後の「肉体」を地に還す儀式をする。

 死者を正しく弔わないと、「尸忌(しき)」に「肉体」だけ喰われた「魂」が「遠仁(おに)」となる。

 「遠仁(おに)」が再び神に召される機会を得るには、新たな肉体が必要になる。そのため生者に災いを成すという。

 戦場(いくさば)に死はつきものだ。
 「遠仁(おに)」に戦場を攪乱されないように、どの国も従軍の『(うた)い』を抱えていた。

 阿比(あび)は、自軍の『(うた)い』のようだ。
 戦場(いくさば)の混乱においても兄上が(しかばね)を拾われ、無事弔ってもらえたのは幸いであった。
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登場人物紹介

白雀(はくじゃく)

下級仕官の四男。戦では「花方」と呼ばれる切り込み隊の一人。

自他ともに認める朴念仁。堅物なくらいに真面目な性格。

新嘗祭の奉納舞ではトリを勤める舞の名手。

鸞(らん)

「久生(くう)」と呼ばれる魂を喰らう無形の神様。

白雀を気に入って自分の食物認定して付き纏う。

相手によって姿形を変えるが、白雀の前では5歳の童の姿でいることが多い。

傲岸不遜で態度がデカい上、戦闘能力も高い。

久生はもともと死者の魂を召し上げる役割を持つが、鸞の場合、生きている者から魂を引っこ抜くこともする。


波武(はむ)

実の名は「大波武」。成人男性を軽々背負える程の大きな白狼の姿の「尸忌(しき)」。

尸忌は、屍を召して地に返す役割を持つ神。

白雀の屍を召し損ねて以降、他に取られないように、何くれと力になる。

鳰(にお)

神に御身を御饌(みけ)に捧げる「夜光杯の儀」の贄にされ、残った右目と脳をビスクの頭部に納めた改造人間。

医術師の梟(きょう)の施療院で働いている。瀕死の白雀を看護した。

阿比(あび)

死者を弔う際に久生を呼び下ろす「謳い」。

屋代に所属しない「流しの謳い」を生業としており、波武、鸞とは古くからの知り合い。

遠仁相手に幾度となく修羅場を潜り抜けている。細かいことは気にしない性格。

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