拾われたもの 5
文字数 647文字
「
周囲で甲斐甲斐しく働いていた衛生隊員の一人が、
「いや……」
また意識が濁るのは何となく避けたかった。
夢と現とを
「痛みは気力も体力も削ぎます。回復を早めるためにも、応じてください」
「しかし……」
「意識が混濁して咄嗟に動けなくなるのがご心配ですか? どのみち今は動けませんよ」
否応なく腕をとられた。
それはそうなのだが……。
多分、針を刺されたのだと思うが、感覚がない。
それほどに、傷の痛みが勝っているのか?
額の汗を拭われる。
「さすがは切り込み隊の若き軍神と呼ばれた
視界の外から声がした。
誰だ?
目を動かす。
黒衣を纏った男が視界に入った。
入れ替わるように衛生隊員が退いた。
男が斜めに背負っている琵琶に気付き、眉間に力を込めた。
「……『
男は右手を胸に置くと、こちらに深々と頭を下げた。
自分は命を拾われたが……。
「
「………礼を……申し上げる」
覚悟の上だ。
ただ、瞑目した。