遠仁の憑坐 5
文字数 701文字
「え………」
俺は身を固くした。それは……どういう……。
「不死不滅の妙薬でもある『丹』が、ヒトの生身に定着しがたいものであるのは、先も説明した通り。それが、鳰 の肉を覆っていた膜を……遠仁 に腑分けされても生き続けることができていた特殊な膜を触媒にして『丹』を錬成した。ただ、それを生身の人間に埋めて果たしてどうなるのかは分らぬ」
「まさか、それを戦場で使おうと……」
梟 は、ゆっくりと首肯いた。
「埋め込む者を国主殿が選んだ。それが、上手くいけば吉。上手く行かざれば……それまで。……戦場で名誉の戦死をしたことになる」
俺は固唾を飲んだ。俺は「生きるべき者」として選ばれたわけではなく、
「どういうわけだか分らぬが、お主にだけ定着した」
だから、俺を戦場から直接この施療院に連れてきた……。
梟は頭を抱えて唸った。
「国主殿には……お主以外は定着しなかったと伝えた。しかし、定着したお主も完全ではない。治る可能性なぞ絶望的と思えた左腕は、形こそ元に近付いたが正直使い物にはならぬ。だがそれは、左腕がそもそも重症だったから時間がかかっているのかもしれぬ。その判断は今の時点ではつかぬ、と」
「人を使って、無体なことをすると思うた。私は、失敗した者らを弔う側だったからな」
阿比 が話を継いだ。
そうか……名誉の戦死………。
そういうことか。
「その上での、今宵の仕儀じゃ。……お主の左腕は動くようになった。遠仁を喰うという特殊な条件で、だが」
「あ、ああ……」
俺は、曖昧な相槌をうった。それがどうしたというのか。
俺は身を固くした。それは……どういう……。
「不死不滅の妙薬でもある『丹』が、ヒトの生身に定着しがたいものであるのは、先も説明した通り。それが、
使い物になるように
、と、儂は国主殿の命で研究を重ねておった。そこで、「まさか、それを戦場で使おうと……」
「埋め込む者を国主殿が選んだ。それが、上手くいけば吉。上手く行かざれば……それまで。……戦場で名誉の戦死をしたことになる」
俺は固唾を飲んだ。俺は「生きるべき者」として選ばれたわけではなく、
ダメもと
の賭博で選ばれた者だったのか。「どういうわけだか分らぬが、お主にだけ定着した」
だから、俺を戦場から直接この施療院に連れてきた……。
梟は頭を抱えて唸った。
「国主殿には……お主以外は定着しなかったと伝えた。しかし、定着したお主も完全ではない。治る可能性なぞ絶望的と思えた左腕は、形こそ元に近付いたが正直使い物にはならぬ。だがそれは、左腕がそもそも重症だったから時間がかかっているのかもしれぬ。その判断は今の時点ではつかぬ、と」
「人を使って、無体なことをすると思うた。私は、失敗した者らを弔う側だったからな」
そうか……名誉の戦死………。
そういうことか。
「その上での、今宵の仕儀じゃ。……お主の左腕は動くようになった。遠仁を喰うという特殊な条件で、だが」
「あ、ああ……」
俺は、曖昧な相槌をうった。それがどうしたというのか。