水上の蛍 7
文字数 1,085文字
そういえば雎鳩 たちは……と視線を向けると、雎鳩は烏衣 を抱きかかえて庵の縁まで上って避難していた。臭い池の水も被らずに済んだようで安心した。
「何せ数が多すぎであるよ!吾 が手伝うてやるから、其方 は遠仁の中身だけ喰えばよい!」
「承知した」
誠に鸞が居てくれて助かった。これを全部喰っていたらと思うと、後のことを考えたくもない。
鸞がイソギンチャクを爆ぜると青白い玉が浮く。
俺はそれに左手を翳して次々に喰っていった。
いつぞや、目玉を得た時と同じように熱が遡るのは腕までだ。
ところが、いくつ喰ったところで手応えが無い。
こいつら、鳰の肉は持っていないのか?
「!」
足元に違和感を覚えて下を見ると、ひときわ黒々としたイソギンチャクが俺の左足に絡んでいた。右手に持っていた合口を見る。
試してみるか……。
どこに突き立てたらよいのか解らなかったので、真ん中らしきところに合口を潜らせた。ふわりと触手がほどけ青白い球が浮く。左手で喰うと触手の方は黒い跡を残して溶けた。
これも……外れか。
ゆるりと池の中央に視線をやる。
パックリと割れた蛟の頭から、未だ何かが覗いている。赤黒く変色した水面を泳いでいくのは、ちと覚悟がいるが、ここらにあふれるイソギンチャクが最近抱え込んだ遠仁なのだとしたら、大本は……鳰の肉を持っている遠仁はまだあそこに潜んでいる可能性がある。
「鸞! まだ、……あそこに何か居るよな」
「ん?」
最後のイソギンチャクをぺしゃんこにした鸞は、俺の視線の先を見た。
取り出した青白い玉を俺に投げてよこす。
俺はソレを左手で受けて握り込んだ。
何匹遠仁を吸い込んだか分からない左の拳を、俺はゆっくりと蛟の頭に向けて突き出した。
左腕が一段と熱を帯びて、
掌が丹い光を放つと、いきなりザンブと池の水面が波打った。
赤黒い飛沫を頭から被る。
抵抗か?
と思ったら、違う! ヤツ、逃げる気だ!
蛟の頭から青大将ほどの真っ黒な蛇が、ニョロリと水面に躍り出た。
逃すモノか!
俺は躊躇わず蛇の進行方向に歩を進めた。
真っ直ぐ、雎鳩たちの元に向かっている。
雎鳩の方を見ると、最悪なことに丁度烏衣が気が付いたところだった。
周囲の光景に目を見開いて、硬直している。
雎鳩が何事か話して揺さぶっているが、ビクとも動けない。
まずい。
雎鳩の足手まといになる。
鸞の方を振り向くと、鸞も蛇と格闘していた。
クッ……。潜んでいたのは1匹ではなかったのか!
俺は舌打ちすると、とりあえず雎鳩らに向かっているヤツだけはどうにかしようと合口を持ち直した。
「何せ数が多すぎであるよ!
「承知した」
誠に鸞が居てくれて助かった。これを全部喰っていたらと思うと、後のことを考えたくもない。
鸞がイソギンチャクを爆ぜると青白い玉が浮く。
俺はそれに左手を翳して次々に喰っていった。
いつぞや、目玉を得た時と同じように熱が遡るのは腕までだ。
ところが、いくつ喰ったところで手応えが無い。
こいつら、鳰の肉は持っていないのか?
「!」
足元に違和感を覚えて下を見ると、ひときわ黒々としたイソギンチャクが俺の左足に絡んでいた。右手に持っていた合口を見る。
試してみるか……。
どこに突き立てたらよいのか解らなかったので、真ん中らしきところに合口を潜らせた。ふわりと触手がほどけ青白い球が浮く。左手で喰うと触手の方は黒い跡を残して溶けた。
これも……外れか。
ゆるりと池の中央に視線をやる。
パックリと割れた蛟の頭から、未だ何かが覗いている。赤黒く変色した水面を泳いでいくのは、ちと覚悟がいるが、ここらにあふれるイソギンチャクが最近抱え込んだ遠仁なのだとしたら、大本は……鳰の肉を持っている遠仁はまだあそこに潜んでいる可能性がある。
「鸞! まだ、……あそこに何か居るよな」
「ん?」
最後のイソギンチャクをぺしゃんこにした鸞は、俺の視線の先を見た。
取り出した青白い玉を俺に投げてよこす。
俺はソレを左手で受けて握り込んだ。
何匹遠仁を吸い込んだか分からない左の拳を、俺はゆっくりと蛟の頭に向けて突き出した。
左腕が一段と熱を帯びて、
これは当たりだ
と俺に告げる。掌が丹い光を放つと、いきなりザンブと池の水面が波打った。
赤黒い飛沫を頭から被る。
抵抗か?
と思ったら、違う! ヤツ、逃げる気だ!
蛟の頭から青大将ほどの真っ黒な蛇が、ニョロリと水面に躍り出た。
逃すモノか!
俺は躊躇わず蛇の進行方向に歩を進めた。
真っ直ぐ、雎鳩たちの元に向かっている。
雎鳩の方を見ると、最悪なことに丁度烏衣が気が付いたところだった。
周囲の光景に目を見開いて、硬直している。
雎鳩が何事か話して揺さぶっているが、ビクとも動けない。
まずい。
雎鳩の足手まといになる。
鸞の方を振り向くと、鸞も蛇と格闘していた。
クッ……。潜んでいたのは1匹ではなかったのか!
俺は舌打ちすると、とりあえず雎鳩らに向かっているヤツだけはどうにかしようと合口を持ち直した。