夏椿の森 4
文字数 594文字
「されば、阿比 殿には『久生 』の顔見知りも居るのか?」
阿比は、ふいとこちらに目線を呉れた。
「いる。というか、『謳 い』は大体そうであろうな。同業の交わりは少ないから詳しくは知らぬが。……まぁ、あっちは、身が移ろうのでこちらが馴染まぬ」
身が移ろう? どういうことだ?
「『尸忌 』は、波武 のように決まった姿を持つが、『久生』は固定しない。老若男女無限に変化する。人格も固定しないので、付き合いにくい」
「そのくせ、力は強いがな。吾 らが束になって掛からぬと喰えぬものも、アレは一気に召していく」
波武がこちらに寄って、頬の和毛 を擦り付けた。
「お前もいずれ召されるときには、とくと拝むことになろうぞ」
「うむ。……楽しみにしておく」
そうだな。いずれは、逢うことになる。
「禊 ぎ終えたなら、上がってこい。傷の手当てをしてやろう」
阿比が指で先を示した。
「なんだ? 示し合わせていたのか?」
俺は重い体を引き上げた。足先は冷えすぎて感覚が鈍くなっている。
「アヤツ等に邪魔はされたくない。お前は俺が喰うのだから」
波武が言った。
これまた変わった……加護のされ方だな。
「お前が鳰の肉を集めて徳を積めば、ますます美味くなる。だから加勢してやる。頼りにしてよいぞ」
「では、存分に加勢していただこうか」
俺は失笑を漏らした。
だとするならば……
「鳰を、見張るのは何故だ?」
「その口は持たぬ」
波武はうそぶいた。
阿比は、ふいとこちらに目線を呉れた。
「いる。というか、『
身が移ろう? どういうことだ?
「『
「そのくせ、力は強いがな。
波武がこちらに寄って、頬の
「お前もいずれ召されるときには、とくと拝むことになろうぞ」
「うむ。……楽しみにしておく」
そうだな。いずれは、逢うことになる。
「
阿比が指で先を示した。
「なんだ? 示し合わせていたのか?」
俺は重い体を引き上げた。足先は冷えすぎて感覚が鈍くなっている。
「アヤツ等に邪魔はされたくない。お前は俺が喰うのだから」
波武が言った。
これまた変わった……加護のされ方だな。
「お前が鳰の肉を集めて徳を積めば、ますます美味くなる。だから加勢してやる。頼りにしてよいぞ」
「では、存分に加勢していただこうか」
俺は失笑を漏らした。
だとするならば……
「鳰を、見張るのは何故だ?」
「その口は持たぬ」
波武はうそぶいた。