堕ちた片翼 5
文字数 759文字
折りしも夕闇がせまり、鷹鸇 は離れに逗留することになった。いかな
これも、
ふん。煩わしいことだ。
(白雀 殿は、アヤツに随分と嫌な目に合わされてきたのでしょうね)
厨 で夕餉の膳を準備しながら、鳰 が言った。
「何故そう思う?」
(メッチャ嫌なヤツだから。きっと、白雀殿にもたくさん意地悪してたのだろうなと)
俺は飯を盛っていた手を止めた。
カラクリなれば、……感情が無ければ、如何様 に悪 し様にしても良いと思ったのだろうな。仮に、損ないでもしたらどうする気であったのか。
鳰に何事も無くて良かった。
「付き合わせて済まぬな」
(あっちが勝手に来たのですよ。白雀殿が謝るのは筋違いでございます)
「俺の因縁とすれば、俺の所為だ。……鳰を器物と思うておるアヤツは、謝ることはないだろう」
(白雀殿に謝られたら、……私の怒りの持っていきようがありませぬ)
ふと、笑みが漏れた。
「鳰は……良い子だな」
鳰はお玉を手にしたまま。こちらに面 を向けた。
(……褒めても何も出ませぬが?)
コヤツはすぐ茶化す。
「何か欲しくて褒めているわけではない」
(えー……ちょっとお待ちください)
「ん?」
鳰は右手を菜箸に持ち替えて、鍋の中の芋を突き刺した。
(はい。あーん)
「は?」
俺は口の前に突き出された芋と、鳰を見比べた。
(私は味見が出来ませぬ)
それはそうだが……。
渋々口を開けると、鳰に芋を放り込まれた。
「うっ、ほわっ! あっつ!」
慌てて口に手をやる。
頭の中で鳰の笑い声が弾けた。
俯いた上目で見ると、菜箸を持った手で口元を隠すような仕草をして肩を振るわせていた。
鳰の声を……早く聞きたいものだな。
いけ好かない相手
とはいえ、宵闇に放り出すほどクズではない。万が一にも後味の悪い結果に陥れば、こちらが品位を下げる。これも、
大人の立ち回り
というやつだ。ふん。煩わしいことだ。
(
「何故そう思う?」
(メッチャ嫌なヤツだから。きっと、白雀殿にもたくさん意地悪してたのだろうなと)
俺は飯を盛っていた手を止めた。
カラクリなれば、……感情が無ければ、
鳰に何事も無くて良かった。
「付き合わせて済まぬな」
(あっちが勝手に来たのですよ。白雀殿が謝るのは筋違いでございます)
「俺の因縁とすれば、俺の所為だ。……鳰を器物と思うておるアヤツは、謝ることはないだろう」
(白雀殿に謝られたら、……私の怒りの持っていきようがありませぬ)
ふと、笑みが漏れた。
「鳰は……良い子だな」
鳰はお玉を手にしたまま。こちらに
(……褒めても何も出ませぬが?)
コヤツはすぐ茶化す。
「何か欲しくて褒めているわけではない」
(えー……ちょっとお待ちください)
「ん?」
鳰は右手を菜箸に持ち替えて、鍋の中の芋を突き刺した。
(はい。あーん)
「は?」
俺は口の前に突き出された芋と、鳰を見比べた。
(私は味見が出来ませぬ)
それはそうだが……。
渋々口を開けると、鳰に芋を放り込まれた。
「うっ、ほわっ! あっつ!」
慌てて口に手をやる。
頭の中で鳰の笑い声が弾けた。
俯いた上目で見ると、菜箸を持った手で口元を隠すような仕草をして肩を振るわせていた。
鳰の声を……早く聞きたいものだな。