銀花 7
文字数 654文字
俺と鸞は、月に照り映える雪の中にただ立ち尽くしていた。
「主は……時々予想外のことをしでかすのぅ」
「いや、遠仁なれば喰えばよいと思うて……。さすれば今後惑わされることはないだろうと……そう思うただけなのだが」
「遠仁でなければ、どうする気だったのだ?」
「いや、そこは、話せば分かると思うた。こっちに赤子を押し付けてくる程話が出来るヤツなら、なんとかなるかな、と」
「呆れた度胸だな。まさかこちらから話しかけるとは思わなんだ」
「やー……、企鵝の言うように無視するのは気の毒だと思ったのだ。きっと、仔細あって迷うているのだと思ったから……。でも、まさか抱えている赤子があの女子の願望の産物であったことまでは予測がつかなんだ」
「結局、あの女子は誰なのだ?」
「誰なんだろうな。そして、赤子はどうなったのだろう。生きているのか、召されたのか。本当に、あの女子だけ召されそこなったのか……。赤子だけ未だどこかに迷うているのか……。こうなったのはいかな経緯なのか……。解らぬことだらけだ」
手元の簪 に視線を落とす。
繊細な意匠で、並みならぬ品であると見た。
「ほう……。桜貝だな」
俺の手元を見て、鸞が呟いた。
「桜貝? ああ、この薄紅の花びら全てが貝なのか?」
透けるように薄く淡い桜貝で華やかな八重桜が象 られている。ここまで手の込んだ品ならば、ここから身元を辿ることも出来るかもしれぬ。
俺は内に着こんでいた綿入れにそっと包むようにして簪を納めた
「さて、明けまでにはまだ早い。もう一寝するか……」
俺は鸞を促して雪洞へ戻った。
「主は……時々予想外のことをしでかすのぅ」
「いや、遠仁なれば喰えばよいと思うて……。さすれば今後惑わされることはないだろうと……そう思うただけなのだが」
「遠仁でなければ、どうする気だったのだ?」
「いや、そこは、話せば分かると思うた。こっちに赤子を押し付けてくる程話が出来るヤツなら、なんとかなるかな、と」
「呆れた度胸だな。まさかこちらから話しかけるとは思わなんだ」
「やー……、企鵝の言うように無視するのは気の毒だと思ったのだ。きっと、仔細あって迷うているのだと思ったから……。でも、まさか抱えている赤子があの女子の願望の産物であったことまでは予測がつかなんだ」
「結局、あの女子は誰なのだ?」
「誰なんだろうな。そして、赤子はどうなったのだろう。生きているのか、召されたのか。本当に、あの女子だけ召されそこなったのか……。赤子だけ未だどこかに迷うているのか……。こうなったのはいかな経緯なのか……。解らぬことだらけだ」
手元の
繊細な意匠で、並みならぬ品であると見た。
「ほう……。桜貝だな」
俺の手元を見て、鸞が呟いた。
「桜貝? ああ、この薄紅の花びら全てが貝なのか?」
透けるように薄く淡い桜貝で華やかな八重桜が
俺は内に着こんでいた綿入れにそっと包むようにして簪を納めた
「さて、明けまでにはまだ早い。もう一寝するか……」
俺は鸞を促して雪洞へ戻った。