伏魔の巣 1
文字数 885文字
死んだ子どもの爪を所望する狂女の話だ。ソイツが、
これまで幾度かの遠仁との遭遇で、いくつかパターンが知れた。喰う喰わざる関係なく、
そこに居る
ことは解る。遠仁を喰うとき、腕に熱を帯びるのは同じだ。遠仁が何者かに憑いている場合、それごと喰うと空になった何者かを吐き出すようになっているらしい。鳰の肉は、遠仁を喰った後に、そこに残る。問題は、肉の大きさ……。
今、目の前でパタパタと立ち働いている鳰を見た。
先日は眼球であったから手の内に収まる大きさで済んでいたが、これが大きな部位となると想像するだに恐ろしい。脚だったりすると俺はかなりの大きさの肉の塊を担いで帰ってくることになる。
なかなかに見られた
アタマおかしーレベルだ。
これがまぁ、尻だったりすると目も当てられない。
鳰の言葉を借りるのであれば、確かに「変態」だ。
そもそも、鳰は
失念した。肉を集めると決めた折、そこまで思い至らなかった。
鳰がこちらに面を向けた。
(
「クルクル動きながら念を撒き散らせる鳰の方が特殊なのだ」
(主が単純すぎるとは思い至りませぬか?)
「俺は単純で結構だ」
(すぐそーやって開き直るー! 可愛げというモノがありませぬな)
「そんなもん、要らぬだろうが。誰にその可愛げとやらを披露するのだ」
(私に披露してくださればよい)
「なっ、ばっっ……
「鳰には、白雀殿も形無しであるな」
手に何やら紙の束を携えている。
俺は下唇を突き出して文句を言ってやった。
「誠にコヤツは『ひとをくったやつ』であるよ。いかに育ててはかような
「これは失敬! そう来るよのう!」
ひたと額に手を当てて、梟は破顔一笑した。
笑い事ではないぞ。
俺は溜息をついた。