掌(たなごころ)の月 2
文字数 975文字
後の始末は任せろと
日暮れになっても戻らぬ娘に騒然となっていた館は、とりあえず無事を喜んだ。
抗議を入れた
ま、以降のことは俺の知ったことではない。
「なんか色々よかったんじゃない?」
翌日、雎鳩は肩をすくめて笑った。
「ありがたい。これからの動きの
俺は素直に雎鳩に感謝した。
ただ、この娘には本当に謎が多いのだが……。
なぜあそこで俺を特定した?
何故俺の目的を知っている?
どうして、遠仁が解るのだ?
そして、あの動じなさ加減も胆が据わりすぎている。
俺ですら色を失った鸞の所業にも、この子女は叫び声一つ上げなかった。
「で、どうするの? また、あの屋敷に行くの?」
気取らぬ様子で俺を見上げた雎鳩に、俺は戸惑った。
「あ、いや……」
施療院へ戻りたいと思っていた。
夜半に蓮角に連れ出されて以降、梟らを、大分心配させてるはずだ。
手元に戻った鳰の腕と腑を早く渡してやりたい。
「施療院へ、一旦顔を出そうと思う」
「そう……」
雎鳩はやや顔を曇らせた。
「では、暇を取らせます。その間、私なりに色々探っておくわね」
「痛み入る」
「ん? なんだ? 贄の子のところに参るのか?」
俺と雎鳩の会話に割り込んだのは、童子の様になっている
「
「あのな……、鸞よ」
俺は鸞の目の高さまでしゃがみこむ。
「主は何故俺に付いてくるのだ?」
「吾の食い物の見張りをして何が悪い!」
鸞は偉そうに胸を反らせた。
俺のことを食い物扱いする奴……と言えば。
「あっちには、
「なんと! アヤツが居るのか? 尚更行かねばならぬ!」
鸞は鼻息荒く憤慨した。
あー。
コヤツら、阿比繋がりの知り合いなのかよ。
面倒なことにならぬとよいが……。