梟の施療院 2
文字数 619文字
来客を迎え
遣いの用向きは、家督を弟に譲る旨の承諾を請うものだった。
元通りに動けるようになり仕官に戻るのは年単位の時間がかかりそうだ。老い先の短い父の心配も解る。稼ぎ頭がいないことは死活問題だ。
今でこそ報償で治療費を賄っているらしいが、先の見えない金食い虫は、下手をすると家から捨てられるかもな。
思うように動けぬ身体を恨んだとてせんの無いことだ。
了承の意思を伝えて、遣いを早々に帰した。
床に座して茫然としていると、戸口から
「うん」
僅かに
恥ずかしいところを見られたと思った。
俺は拳を掛布の下に隠して瞑目して顔をそむけた。
と、隠した拳に触れた感触があった。
ハッと顔を上げると、掛布越し、
唐突にこみ上げるものがあった。
口惜しさからか自己憐憫からか判らなかったが、涙が
不自由な左手で拭うことも出来ず、涙はただ、
ぼたぼたと掛布に落ちる儘であった。