伏魔の巣 5
文字数 618文字
着替えて戸口まで出ると、遅い! と蓮角 に悪態をつかれた。馬用の鞭を弄 びながら、斜に構えて俺を見る。
「お前なぞ手鎖で引き摺って行きたいくらいだが、肉塊にして親父殿に逢わせても意味がないからな。今回ばかりは乗せてやろう。それとも、……『丹』が効くのか?」
ピシリと右頬に痛みが走った。つうッと温かいものが流れる感触。
俺は黙したまま蓮角を睨んだ。
「ふん。『丹』は、効いておらぬようだな」
コイツを乗せてやれ、と騎馬の独りに声を掛けた。俺は黙ったまま、その騎馬まで歩み寄った。背まで引き上げてもらうと、陰からそっと手ぬぐいが差し出される。顔を上げると、兵は前を向いたまま、どうぞ顔を拭 ってくだされ、と呟いた。俺は、小さく頷くとその言葉に甘えた。
「白雀殿……」
施療院の戸口まで梟 が出てきて、俺の方を心配そうに見つめる。
それを見た蓮角がニカッと笑った。
「おう。梟殿、此度は誂 えてくれて感謝するぞ! 心配するな。14分の1の貴重品ゆえ、丁重に扱うつもりだ」
14分の1。……13人は死んだのか。俺はゴクリと喉を鳴らした。
「ではな! 梟殿。いずれまたお会いしよう」
蓮角は馬に飛び乗ると、鼻先を返した。
さても、国主殿は俺を召して一体何が見たいのか。それとも、いよいよ『丹』をえぐり出そうというのか……。
どうやら不死不滅は関係なさそうなのに、せっかちなことだ。
そこで、俺はふと気が付いた。
波武 、今宵は静かであったな……。
「お前なぞ手鎖で引き摺って行きたいくらいだが、肉塊にして親父殿に逢わせても意味がないからな。今回ばかりは乗せてやろう。それとも、……『丹』が効くのか?」
ピシリと右頬に痛みが走った。つうッと温かいものが流れる感触。
俺は黙したまま蓮角を睨んだ。
「ふん。『丹』は、効いておらぬようだな」
コイツを乗せてやれ、と騎馬の独りに声を掛けた。俺は黙ったまま、その騎馬まで歩み寄った。背まで引き上げてもらうと、陰からそっと手ぬぐいが差し出される。顔を上げると、兵は前を向いたまま、どうぞ顔を
「白雀殿……」
施療院の戸口まで
それを見た蓮角がニカッと笑った。
「おう。梟殿、此度は
面白そうなモノ
を14分の1。……13人は死んだのか。俺はゴクリと喉を鳴らした。
「ではな! 梟殿。いずれまたお会いしよう」
蓮角は馬に飛び乗ると、鼻先を返した。
さても、国主殿は俺を召して一体何が見たいのか。それとも、いよいよ『丹』をえぐり出そうというのか……。
どうやら不死不滅は関係なさそうなのに、せっかちなことだ。
そこで、俺はふと気が付いた。