夏椿の森 6
文字数 651文字
そばに寝そべっていた波武 がカフゥと大欠伸をした。
「まぁ、お前も晴れて追わるる身であるか。なかなか緊張感があって良いの」
「波武は、他人事のようだな」
俺は不満げに応じた。
「そんなことは無いぞ。吾 の食物 の心配だ。重要だ」
「飯の恨みは恐ろしいと言うからな」
阿比 が、クスリと笑った。
「いずれ鳰 も、取り返した肉が多くなれば、今の比でないくらいに遠仁 を吸い寄せることになる。あれもまた甘露にあれば……」
波武は、耳先をピクピクさせた。
「今は、大丈夫なのか? 波武がこっちに来てしまっては……」
俺が心配すると、波武は、尸忌 は吾だけにあらず、と答えた。
「ところで、貴殿はこの後如何 とするのか?」
「ああ、それなのだが……」
俺は、遠仁憑きの長物が言っていた狂女の話をした。
「ふん。アレは遠仁になりたてであったからな。噂の域を出ぬ情報よ」
気のない様子で波武は目を閉じた。
で、あれば……。
俺は鴫の顛末と、『夜光杯の儀』を図ったのは、少なくともこの国に居る誰か、それも城下近くの者の可能性がある旨を話した。
阿比が首を傾げる。
「では、……しばらく私と城下をさぐってみるか。波武は、此度 、白雀殿が得た肉を鳰の元に届けては呉れぬか」
「まぁ……よいだろう。承知した」
「貴殿は、腫れが引くまで隠れておき、動けるようになったら私の弟子の振りをして城下へ潜ればよい」
「え? 阿比の弟子の振りか?」
俺が渋い顔をすると、阿比はニコリと笑った。
「姿をくらます為だ。動けるようになるまで、ここで『謳 い』の手ほどきをしようぞ」
「まぁ、お前も晴れて追わるる身であるか。なかなか緊張感があって良いの」
「波武は、他人事のようだな」
俺は不満げに応じた。
「そんなことは無いぞ。
「飯の恨みは恐ろしいと言うからな」
「いずれ
波武は、耳先をピクピクさせた。
「今は、大丈夫なのか? 波武がこっちに来てしまっては……」
俺が心配すると、波武は、
「ところで、貴殿はこの後
「ああ、それなのだが……」
俺は、遠仁憑きの長物が言っていた狂女の話をした。
「ふん。アレは遠仁になりたてであったからな。噂の域を出ぬ情報よ」
気のない様子で波武は目を閉じた。
で、あれば……。
俺は鴫の顛末と、『夜光杯の儀』を図ったのは、少なくともこの国に居る誰か、それも城下近くの者の可能性がある旨を話した。
阿比が首を傾げる。
「では、……しばらく私と城下をさぐってみるか。波武は、
「まぁ……よいだろう。承知した」
「貴殿は、腫れが引くまで隠れておき、動けるようになったら私の弟子の振りをして城下へ潜ればよい」
「え? 阿比の弟子の振りか?」
俺が渋い顔をすると、阿比はニコリと笑った。
「姿をくらます為だ。動けるようになるまで、ここで『