業鏡 8
文字数 586文字
――我は貧しき生まれなり。
――ひもじく餓 えて盲 たものなり。
――行き倒れ、捨て置かれ、弔 われることなく遠仁 となり
――あさましく流離 うていたり。
――ところがある日、縁 を得てこのオンナに憑りついた。
――老い先短いコヤツに憑いておれば、我もいずれ弔ってもらえよう。
なんと。こやつ、老女に憑りついて、ゆくゆくは一緒に弔ってもらい久生 に召されることを望んでおるのか。
……いや、待てよ。
「其の方、盲と言ったな。何故、其の方が憑いたこの女人の目が見えるようになったのだ?」
――縁 じゃ
「だから、その『縁』とやらは、何なのだ?」
――目玉を得たのじゃ
「目玉……とな」
っ……あっつ。
……来た!
この感覚!
俺は無意識に左の拳を固めた。
――こわや……こわや………ソレを 我に いかにせん
「その目玉、一体どこで手に入れた?」
――それを 聞いてなんとする
「問うておるのはこちらだ。問を返すな」
――甘き香りに 誘われいずれば そこは 麗し 遠仁の饗宴
――はぁ 甘露の贄に群がりし 数多の遠仁ども 我を先にと 喰いあって
――我は その折 こぼれた目玉を 喰ったのじゃ
俺は、ソイツを睨んだ。
向こうからおいでなすった。
これは運命か?
偶然か?
こういうことも、ありうるのか?
いやしかし、今はそんなことはどうでもいい。
それだけだ。
――ひもじく
――行き倒れ、捨て置かれ、
――あさましく
――ところがある日、
――老い先短いコヤツに憑いておれば、我もいずれ弔ってもらえよう。
なんと。こやつ、老女に憑りついて、ゆくゆくは一緒に弔ってもらい
……いや、待てよ。
「其の方、盲と言ったな。何故、其の方が憑いたこの女人の目が見えるようになったのだ?」
――
「だから、その『縁』とやらは、何なのだ?」
――目玉を得たのじゃ
「目玉……とな」
っ……あっつ。
……来た!
この感覚!
俺は無意識に左の拳を固めた。
――こわや……こわや………ソレを 我に いかにせん
「その目玉、一体どこで手に入れた?」
――それを 聞いてなんとする
「問うておるのはこちらだ。問を返すな」
――甘き香りに 誘われいずれば そこは 麗し 遠仁の饗宴
――はぁ 甘露の贄に群がりし 数多の遠仁ども 我を先にと 喰いあって
――我は その折 こぼれた目玉を 喰ったのじゃ
俺は、ソイツを睨んだ。
向こうからおいでなすった。
これは運命か?
偶然か?
こういうことも、ありうるのか?
いやしかし、今はそんなことはどうでもいい。
どうやらコイツは大当たりだった
。それだけだ。