拾われたもの 1
文字数 600文字
ある時、はっきりと目が覚めた。
次第に像を結ぶ視界。
目だけを注意深く動かす。
視野の欠損はなさそうだ。
自陣の救護小屋にしては、普請のよい部屋。
ここは、どこだ?
添木の当たった右腕は動かせない。
左腕は……、ひどく熱を持っているようだ。
両手の指先を動かしてみる。幸い神経は繋がっている。
体幹は
左の足には硬く包帯が巻いてあった。
自由が利くのは、右足だけのようだ。
注意深く首を巡らす。
体を起こせないので隅々まで全部を見渡すことは出来ないが、僅かに耳に届く苦痛にあえぐ息やブツブツと呟く声から、自分以外にも傷病者のいる部屋に居るらしい。
時間の感覚がわからない。
今は、いつで、何時ごろなのだろう。
「おう。目が覚めたのだな」
ふいに声がして、俺は声の主を探した。
混濁の中で聞いたような気がする、安定した低い声音。
視界に黒い影が差した。薄い明かりに見知らぬ人相が浮かんだ。後ろに束ねた総髪に大分白髪がまじった男。
医術者か薬師だろうか。
「
男は俺の背に腕を差し入れ体を起こすと、枕元に置いてあったらしい吸い飲みを口元に傾けた。
唇を濡らす程度の水分が、乾いて貼りついたようになった舌を潤した。
ゆっくりと口内にいきわたらせた水を、慎重に飲み下す。
「……
男は笑ったようだった。