汲めども尽きぬ 5
文字数 603文字
翌朝朝餉を戴いてから、鸞と町へ出た。早くも手ぬぐい綿入れ姿の湯治客が目に入る。
人の流れを見るとはなしに目で追いながら、俺らは歩き始めた。
「主も元兵 ならば、此処のことを知らぬ訳ではあるまいに」
「いや、遊興の旅なぞ余裕のある者の所業よ。それに我々下っ端は使い捨てだからな」
「戦 の花形でもか?」
「……花形は、散るからこそ花なのだ。醜く枯れ萎れては花とは言わぬ」
鸞がふと足を止めた。
ん?
俺も足を止める。
鸞は、眉間に皺を寄せて俺をねめつけて居た。
なんだ? 何か気に障ったか?
「主のその、何もかも手放したみたいな利他に徹する質 が……つくづくと奇異で気持ち悪いと思うたが、摺り込まれた結果なのだな」
ああ、そんなこと……考えたこともなかったな。
「時に、自尊は、
「たまには、利己に生きようとは思わぬのか?」
「肉集めは、利己だ。誰に命ぜられたわけでもない」
「そうか? 傍目には甲斐と称して自縛している様にも映る」
「モノは言い様だな。心が動いたからしていること。まぁ、強いて言えば、己に命ぜられた勅 とでも言えようかな。……それについてはソレ以上言うな。詰 る羽目になる」
鸞は気まずそうに俺から目を逸らしたまま、右腕に絡みついた。
「鳰の肉は、その先の右手の店にあると、影向 殿の甲羅は指示しておるよ」
視線の先の店には、計りの分銅を象った「両替屋」の看板が下がっていた。
人の流れを見るとはなしに目で追いながら、俺らは歩き始めた。
「主も元
「いや、遊興の旅なぞ余裕のある者の所業よ。それに我々下っ端は使い捨てだからな」
「
「……花形は、散るからこそ花なのだ。醜く枯れ萎れては花とは言わぬ」
鸞がふと足を止めた。
ん?
俺も足を止める。
鸞は、眉間に皺を寄せて俺をねめつけて居た。
なんだ? 何か気に障ったか?
「主のその、何もかも手放したみたいな利他に徹する
ああ、そんなこと……考えたこともなかったな。
「時に、自尊は、
無駄
だからな」「たまには、利己に生きようとは思わぬのか?」
「肉集めは、利己だ。誰に命ぜられたわけでもない」
「そうか? 傍目には甲斐と称して自縛している様にも映る」
「モノは言い様だな。心が動いたからしていること。まぁ、強いて言えば、己に命ぜられた
俺を利用している
主らを鸞は気まずそうに俺から目を逸らしたまま、右腕に絡みついた。
「鳰の肉は、その先の右手の店にあると、
視線の先の店には、計りの分銅を象った「両替屋」の看板が下がっていた。