遠仁の憑坐 6
文字数 583文字
「正直、この上、お主の『丹』がどのような作用をするのか分らぬ。もし、損ねた身体を回復させるのみならず、目論見通り不死不滅の作用を発揮したら、儂は
梟 は頭を掻きむしって懊悩した。
「遠仁を喰らうという条件を、国主殿がどう判断するのか儂には分らぬが、それが些末なことと思うのならば、白雀殿! 国主殿は、お主の左腕に埋め込んだ『丹』をえぐり出してでも所望するだろう。唯一、生身の身体に親和する『丹』なのだからな」
俺は、ゾッとして己の左腕を抱いた。
我が国主殿は、そこまで狂ったお方だったか?
「誠に済まぬが、国主殿への上手い言い訳を思いつくまで、左腕が動くようになったことは内密にしてはくれまいか」
「……はっ」
俺の顔に、乾いた笑いが貼りついた。
「内密もなにも……」
俺がこの施療院に来てからというもの、
兄から弟へ
それだけだ。
身内の面会どころか、見舞いの一人も来なかったではないか。
何が「若き軍神」だ!
「勝旗の旗手」だ!
使い物にならぬと見れば、これまで一切顧みられなかったではないか。
「誰ぞ、………俺などに興味を示すものか……」
「さて、……それはどうであろうな」
阿比が異を唱えた。
研究を完成させてしまった
ことになってしまう」「遠仁を喰らうという条件を、国主殿がどう判断するのか儂には分らぬが、それが些末なことと思うのならば、白雀殿! 国主殿は、お主の左腕に埋め込んだ『丹』をえぐり出してでも所望するだろう。唯一、生身の身体に親和する『丹』なのだからな」
俺は、ゾッとして己の左腕を抱いた。
我が国主殿は、そこまで狂ったお方だったか?
「誠に済まぬが、国主殿への上手い言い訳を思いつくまで、左腕が動くようになったことは内密にしてはくれまいか」
「……はっ」
俺の顔に、乾いた笑いが貼りついた。
「内密もなにも……」
俺がこの施療院に来てからというもの、
俺に
と訪ねる者はあったか?家に
払われた従軍の報償と戦傷に対する見舞い金の知らせ、兄から弟へ
俺を無視
しての家督の移譲を事実上報告
するだけの遣い。それだけだ。
身内の面会どころか、見舞いの一人も来なかったではないか。
何が「若き軍神」だ!
「勝旗の旗手」だ!
使い物にならぬと見れば、これまで一切顧みられなかったではないか。
「誰ぞ、………俺などに興味を示すものか……」
「さて、……それはどうであろうな」
阿比が異を唱えた。