遠仁の憑坐 2
文字数 582文字
「私の所為とは言え、終 にここも探り当てられてしまったか」
阿比 は苦笑すると波武 の頭をワシワシと撫でた。
「人間の私は、オマエほど鼻が利くわけでは無いからな」
「そういえば、先程の遠仁 が、贄 がなんとかと言っていた。鳰 は『遠仁の憑坐 』との噂も聞く。一体、どういうことなのだ?」
俺の疑問に、阿比は黙して鋭い視線のみを呉 れた。
足元にあった琵琶の頸を掴むと、ひょいと背負った。腕を組んで表の戸口まで行き、振り向いて右手でくいっとこちらを招く手振りをする。
俺は狼狽えて、周囲を見た。
梟 が頷く。
俺だけついてこいということか。
肩を上下させて深い溜息をついた。
もはや無用のモノとなった左腕を吊っていた布を剥ぎ取ると、俺は阿比の後に続いた。
庭から続く菜園のはてまで行くと、阿比はようやく足を止めた。
月明かりに照らされた菜園は、白黒の陰影もくっきりとして凡 そこの世の場所ではないような光景だった。
「すまぬな。鳰 には、……聞かせられぬ理 ゆえ」
阿比はゆるりと振り向いた。
「白雀 殿は真っ直ぐな漢 なれば、縁遠い話であろうが……呪 いの類はご存知か?」
「呪い? 願掛けのようなモノか?」
「そんな、……容易 いものではない」
阿比は月を振り仰ぐと、嘆息した。
「『夜光杯の儀』という古い呪いがある。遠仁に……恃 む呪いだ」
「遠仁に?」
そのような呪いがあるということは、初耳であった。
「人間の私は、オマエほど鼻が利くわけでは無いからな」
「そういえば、先程の
俺の疑問に、阿比は黙して鋭い視線のみを
足元にあった琵琶の頸を掴むと、ひょいと背負った。腕を組んで表の戸口まで行き、振り向いて右手でくいっとこちらを招く手振りをする。
俺は狼狽えて、周囲を見た。
俺だけついてこいということか。
肩を上下させて深い溜息をついた。
もはや無用のモノとなった左腕を吊っていた布を剥ぎ取ると、俺は阿比の後に続いた。
庭から続く菜園のはてまで行くと、阿比はようやく足を止めた。
月明かりに照らされた菜園は、白黒の陰影もくっきりとして
「すまぬな。
阿比はゆるりと振り向いた。
「
「呪い? 願掛けのようなモノか?」
「そんな、……
阿比は月を振り仰ぐと、嘆息した。
「『夜光杯の儀』という古い呪いがある。遠仁に……
「遠仁に?」
そのような呪いがあるということは、初耳であった。