序 1
文字数 295文字
感覚のぼやけた様は、まるで、暗い水底に居るようだった。
混濁した意識の中に、時々ふと鮮明に音が介入してくる。
身体が揺られて、どこかへ運ばれているのは解った。
「……かるか? おい! 聞こえるか……」
「……出血がヒドイな」
「損傷個所は? 具足を外せ!」
目を開けたと思ったが、何も見えなかった。
何者かが体にふれたようだった。
身体がしびれたように重く、痛いのか、苦しいのかも解らない。
感覚が、無くなったようだ。
このまま、死ぬのだろうか。
漠然と思った。不思議と恐怖は無かった。
「ともかく、傷を
ニオ……?
ガクンと身体が揺れて、それきりまた意識は水底に沈んだ。