さえずり 5
文字数 717文字
散々笑い転げた後、鳰は上機嫌で厨へ行ってしまった。取り残された俺は、今だ起き上がる気にもなれずに廊下に転がったままだ。
「今更ジタバタしても、動き出した気持ちは止められぬよ。中途半端にすればするほど、悔いが残るであろう? わざわざ悪手を選択してどうする? 吾が上手く立ち回れと言ったのは、そういう意味ではないのだがなぁ」
鸞が俺を見下ろしてぼやく。
「伯労の方が、よっぽど胆が据わっておったよ。結末が解った上でお主に近付いたのであるからな。で、どうだ? 主は悔いておるか?」
「いや、惜しんではおるが……悔いとは違う」
行き着く先を全く知らぬまま、伯労と語り合い、笑いあった日々。俺は、借り物の身体である雎鳩の様でしか伯労を思い出すことが出来ないが、飾らない伯労の
「な? 出し惜しみはするな。精一杯勤めよ」
鸞は手を出した。俺を助け起こそうというのか? 童子の態のくせに。
「いずれ……俺と鳰の時間にはズレが生じるのだよな」
己の身体を取り戻した鳰の時間は動き出し、俺の時間は止まったままだ。
鸞は、ちょっと目を見開いて見せてから、ニイと笑みを作った。
「ほう。それが臆した理由か? 伯労に聞いたのか」
「鸞には、良い状態で俺の肉を渡さねばならぬ」
鸞は何故かそこで破顔した。
「気にするな! それには既に考えがある!」
「ん?」
やはり、鸞は何かに気が付いている?
「ほれ、いつまでも冷たい床に寝そべっておらんで起きよ! 梟殿から、鵠のことで話があると言うから呼びに来たのだ!」
「お!」
俺は慌ててガバリと起き上がった。
「早くそれを言え! 梟殿をお待たせしておるでは無いか!」
「今更ジタバタしても、動き出した気持ちは止められぬよ。中途半端にすればするほど、悔いが残るであろう? わざわざ悪手を選択してどうする? 吾が上手く立ち回れと言ったのは、そういう意味ではないのだがなぁ」
鸞が俺を見下ろしてぼやく。
「伯労の方が、よっぽど胆が据わっておったよ。結末が解った上でお主に近付いたのであるからな。で、どうだ? 主は悔いておるか?」
「いや、惜しんではおるが……悔いとは違う」
行き着く先を全く知らぬまま、伯労と語り合い、笑いあった日々。俺は、借り物の身体である雎鳩の様でしか伯労を思い出すことが出来ないが、飾らない伯労の
ひととなり
はしっかりと心に刻まれている。確かに彼女は存在したのだ、と。「な? 出し惜しみはするな。精一杯勤めよ」
鸞は手を出した。俺を助け起こそうというのか? 童子の態のくせに。
「いずれ……俺と鳰の時間にはズレが生じるのだよな」
己の身体を取り戻した鳰の時間は動き出し、俺の時間は止まったままだ。
鸞は、ちょっと目を見開いて見せてから、ニイと笑みを作った。
「ほう。それが臆した理由か? 伯労に聞いたのか」
「鸞には、良い状態で俺の肉を渡さねばならぬ」
鸞は何故かそこで破顔した。
「気にするな! それには既に考えがある!」
「ん?」
やはり、鸞は何かに気が付いている?
「ほれ、いつまでも冷たい床に寝そべっておらんで起きよ! 梟殿から、鵠のことで話があると言うから呼びに来たのだ!」
「お!」
俺は慌ててガバリと起き上がった。
「早くそれを言え! 梟殿をお待たせしておるでは無いか!」