第176話 伝さんの庭
文字数 670文字
六月二十四日
吉井さんちの庭の芝生で、ねじ花を見つけた。
飼い犬の、グレートデンの伝さんの犬小屋のすぐそば。くるりくるりと茎を取り巻くように、スクリュー状に小さなピンク色の花がたくさん咲いている。
可愛い花だ。
ののかにも見せてやりたいな。でも、こういう花は摘んでしまったらすぐ萎れてしまう。明るい日差しの下で、楽しそう(?)に咲いてるのを眺めるのが一番か。
と、スズメの親子が芝生にやってきた。何故親子だと分かるのかというと、片方のスズメの飛び方がぎこちないからだ。巣離れはしたものの、子はまだ上手く飛んだり餌を取ったり出来ない。だから、あとしばらくは親が面倒をみてやるのだと、何かで読んだことがある。
ああ、親が子に餌をやっている。仲がいいなぁ。
伝さんも俺と一緒にスズメの親子を見ている。今、散歩から帰ったばかりだから、水を飲ませてやらなきゃな。
「ちょっと待ってな、伝さん」
そう言って水入れを持ってみせると、伝さんは軽く「おん」と鳴いた。待ってるぜ、てな感じなんだろう。
俺は軽く伝さんの頭を撫でると、庭の隅に設けてある流しまで水を入れに行った。
「伝さん、おま……」
たせ、という言葉を、俺は飲み込んだ。だって、伝さんの大きな背中でスズメの親子が遊んでるんだ。伝さんは気にする様子もなく、小鳥が自分の背中で遊ぶのを許している。
伝さん、小さいものが好きだからなぁ。
澄ました顔の伝さん。異種族間の交流は、スズメたちが再びどこかへ飛んでいくまで友好的に続いたのだった。
朝からいいものを見たな。うん。
吉井さんちの庭の芝生で、ねじ花を見つけた。
飼い犬の、グレートデンの伝さんの犬小屋のすぐそば。くるりくるりと茎を取り巻くように、スクリュー状に小さなピンク色の花がたくさん咲いている。
可愛い花だ。
ののかにも見せてやりたいな。でも、こういう花は摘んでしまったらすぐ萎れてしまう。明るい日差しの下で、楽しそう(?)に咲いてるのを眺めるのが一番か。
と、スズメの親子が芝生にやってきた。何故親子だと分かるのかというと、片方のスズメの飛び方がぎこちないからだ。巣離れはしたものの、子はまだ上手く飛んだり餌を取ったり出来ない。だから、あとしばらくは親が面倒をみてやるのだと、何かで読んだことがある。
ああ、親が子に餌をやっている。仲がいいなぁ。
伝さんも俺と一緒にスズメの親子を見ている。今、散歩から帰ったばかりだから、水を飲ませてやらなきゃな。
「ちょっと待ってな、伝さん」
そう言って水入れを持ってみせると、伝さんは軽く「おん」と鳴いた。待ってるぜ、てな感じなんだろう。
俺は軽く伝さんの頭を撫でると、庭の隅に設けてある流しまで水を入れに行った。
「伝さん、おま……」
たせ、という言葉を、俺は飲み込んだ。だって、伝さんの大きな背中でスズメの親子が遊んでるんだ。伝さんは気にする様子もなく、小鳥が自分の背中で遊ぶのを許している。
伝さん、小さいものが好きだからなぁ。
澄ました顔の伝さん。異種族間の交流は、スズメたちが再びどこかへ飛んでいくまで友好的に続いたのだった。
朝からいいものを見たな。うん。