第177話 IT浦島太郎

文字数 633文字

六月二十六日


俺、浦島太郎の気分。


朝のお得意さん(今日は松田さんちの気のいいウィペット、ベルちゃんだった)のお散歩帰り、頼みがあるんだけど、と酒屋の米原さんに呼び止められたのが始まり。

俺が何でも屋だということは、この辺りの人はたいがい知っている。だから、「よしっ! 朝から新規の仕事ゲット!」と心の中で思いっきりガッツポーズした……んだけど。

任されたのは、パソコン。

何、この表計算ソフト。名前は同じなのに、俺の使ってるのと全然違うじゃないか。ツールバーとかの表示が全く違う! 何だ、この左上隅の妙な花(?)のようなマークは。

た、確かに俺のパソコンは古いけどさ。そこに入ってるソフトだって古いんだろうけどさ。

何じゃこりゃ!こりゃ~こりゃ~……エコーつきで無言でシャウトする俺(我ながら器用だな)。

いや、米原さんに使い方を教えてくれって頼まれたんだけどね……。
出来ませんとは言えません。それがサラリーマン時代に培ったポリシー。

時間をもらって何とか機能を理解して、簡単な表を作成してみた。……しかし、便利になったもんだな。リストラされてから、新しいバージョンに触れる機会が全くなかったからなぁ…… おーえす? も俺のと違うから、起動画面からして違うし。はぁ。

パソコンを本格的に経理に使うつもりなら、専用のソフトを入れた方がいいですよ、と米原さんにはアドバイスしておいた。

時代は進んでいるんだなぁ。


俺、完璧IT浦島太郎。
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