第142話 チンピラ・シンジ、たこ焼き屋にジョブ・チェンジ
文字数 727文字
十一月十五日
駅裏を歩いていたら、久しぶりにシンジに会った。なんと、たこ焼き屋を始めたらしい。
「最近顔を見ないと思ったら。チンピラ、廃業か?」
からかいがてら訊ねると、苦笑いしている。
「チンピラチンピラ言わないでくださいよ~、もう」
「何にせよ、めでたいじゃないか。ルリちゃんも喜んでるだろ?」
ルリちゃんというのは、シンジの彼女だ。高級クラブで働くいわゆる<夜の蝶>だけど、気立てのいい、優しい女の子だ。
「うん、まあね。試作品食べさせすぎたんで、太った、って怒られましたっす」
「で、合格はもらえた?」
「同僚の女の子たちや、店のママにも味見してもらって、何とか美味しいって言ってもらえるようになったっすよ!」
笑顔が輝いてるぜ、シンジ。俺もうれしくなってくる。
「へえ。じゃあ、俺もひとつもらおうかな」
「まいど~! お客様第一号っすね~」
おお、今日が開店日だったのか。
「光栄だなぁ。美味いの、焼いてくれよ!」
「了解っす!」
ソースと花カツオと青海苔の、オーソドックスなたこ焼きは、けっこう美味かった。ちょっと焦げたのをオマケしてくれたのもうれしい。
「うちのたこ焼き、冷めてもレンジでチンしたらまた美味しくなりますよ~。どうぞ、ご贔屓に!」
「うん。うちのお客様たちにも、それとなく宣伝しとく。頑張れよ、と、あシンジ! 次のお客さんだ、お客さん。じゃあな!」
「わわわ、少々お待ちくださいね~すぐ焼けるから」
シンジとお客様第二号のやり取りを背中で聞きながら歩き出す。知らないうちに笑みがもれていた。
ちょっと軽薄に見えるけど、シンジ、根はとても真面目なやつだ。たこ焼き屋、流行るといいなぁ。
駅裏を歩いていたら、久しぶりにシンジに会った。なんと、たこ焼き屋を始めたらしい。
「最近顔を見ないと思ったら。チンピラ、廃業か?」
からかいがてら訊ねると、苦笑いしている。
「チンピラチンピラ言わないでくださいよ~、もう」
「何にせよ、めでたいじゃないか。ルリちゃんも喜んでるだろ?」
ルリちゃんというのは、シンジの彼女だ。高級クラブで働くいわゆる<夜の蝶>だけど、気立てのいい、優しい女の子だ。
「うん、まあね。試作品食べさせすぎたんで、太った、って怒られましたっす」
「で、合格はもらえた?」
「同僚の女の子たちや、店のママにも味見してもらって、何とか美味しいって言ってもらえるようになったっすよ!」
笑顔が輝いてるぜ、シンジ。俺もうれしくなってくる。
「へえ。じゃあ、俺もひとつもらおうかな」
「まいど~! お客様第一号っすね~」
おお、今日が開店日だったのか。
「光栄だなぁ。美味いの、焼いてくれよ!」
「了解っす!」
ソースと花カツオと青海苔の、オーソドックスなたこ焼きは、けっこう美味かった。ちょっと焦げたのをオマケしてくれたのもうれしい。
「うちのたこ焼き、冷めてもレンジでチンしたらまた美味しくなりますよ~。どうぞ、ご贔屓に!」
「うん。うちのお客様たちにも、それとなく宣伝しとく。頑張れよ、と、あシンジ! 次のお客さんだ、お客さん。じゃあな!」
「わわわ、少々お待ちくださいね~すぐ焼けるから」
シンジとお客様第二号のやり取りを背中で聞きながら歩き出す。知らないうちに笑みがもれていた。
ちょっと軽薄に見えるけど、シンジ、根はとても真面目なやつだ。たこ焼き屋、流行るといいなぁ。