第325話 迎え火と送り火のあいだ

文字数 558文字

・8月15日 迎え火と送り火のあいだ

はぁ……もう八月十五日かぁ。

十三日に迎え火を焚いたばかりだってのに、明日にはもう送り火を焚かないといけない。父さん、母さん、双子の弟──。皆、俺のところに帰ってきてくれてるのかな。分からないけど、帰ってきてるんだと思いたい。

ずっと位牌だけだったけど、この間、一念発起して小さい仏壇を買った。本当に小さい仏壇なんだけど、三人の位牌を収めたらとても<らしく>なった。藤棚のあるお寺の住職さんに、魂入れもしてもらったし。

仏壇を設置して、初めてのお盆。喜んでくれてるかなぁ。

そんなことを思いながら、供えた線香が燃え尽きるのを待つ。ちゃんと線香立てに立ててるとはいえ、火のついたままの線香をそのままにして、外に出るのは危ないからな。

ゆるゆると立ち上る煙。お盆用にちょっといい線香を奮発したから、けっこう落ち着く匂いがする。

……
……

さて、線香も燃え尽きたし、仕事に出かけるとするか。

用意しておいた水筒を持って、首にタオルを巻いて、帽子を被って。ドアを開けて出ようとした時。

「え?」

思わず声を出していた。
なんだろう、背中が温かい。これから暑い外に出るっていうのに、ちっとも不快ではない。

「──行ってきます」

無意識に、そう呟いていた。自分でも良く分からないけど……。
まあいいや。今日も、頑張るぞ!
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