第281話 夏だからこうなった

文字数 849文字

・8月2日 よくぞ男に生まれけり

 夕涼み よくぞ男に 生まれけり

詠み人知らずでそんな川柳があったけど、しみじみそれを実感するよなぁ、こう暑いと。

夕方、仕事を終えて家に帰り、このボロビルの屋上に造ったプランター菜園の植物たちにホースで水をやる。もう濡れても構わないというか、むしろびしょ濡れになってしまいたいというか。途中で脱いだTシャツで濡れた顔や髪をがしがし拭きながら、短パン一枚でホースを振り回す。

まるっきり、ガキだよな。

西の空を見れば、太陽はもう沈みかけてる。夜のとばりが降りるのもすぐだ。そういえば、もう立秋が近いんだな。





・8月4日 夏だからこうなった

何でこう暑いのか。

答:夏だから。

そんなこた分かってる。充分承知さ。それでも言いたい。言わせてくれ。

暑い~~~~っ!

Tシャツ絞れるほど汗かきながら(マジ絞れるんだぜ)、側溝の雑草取りしてる俺。心の中で暑い暑いと喚いても罰は当たらないと思う。だいたい何でこんなとこに蒲の穂が群生してるんだよ。どっから種飛んできたんだ。

底に溜まってる土が乾ききってるもんだから、引っこ抜きにくいのなんの。茎が絡み合って、すごく硬い。刈り取るだけなら鎌だけでいいけど、これは根っ子から抜かないといけないから・・・

俺、マジ熱中症になりそう。ちょっと日陰で水分と塩分その他補給しよ。梅干し最強だよな。クエン酸効果万歳!

あ、妙にハイになりかけてんなぁ。危ない危ない。





・8月5日 狐の嫁入り?

雨の匂いがする、と思ってたら、夕立が来た。

買い物帰り、雨宿りしながら空を見上げると、流れていく早い雲と合間に見える薄い青が、複雑なマーブル模様を描きつつ渦巻いている。そのせいか、こんなに大粒の雨が降っているというのに、空は明るい。

それでも、一気に涼しくなった。

ああ、眩しいな。雲の隙間から明るい陽が差してきた。雨はまだ止まない。どっかで狐の嫁入りでもやってるのかなぁ。

それにしても、お天気雨のことをどうして<狐の嫁入り>って言うんだろう。<狸の婿入り>じゃあいけないんだろうか。
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