第185話 らぐじゅありーに風邪引きそう

文字数 619文字

十月二十六日

シーツも換えたし、枕カバーも換えた。昨夜寒かったから、毛布も出した。後は寝るだけ。いつもなら。

だけど、今夜は一味違う。ラベンダーのポプリ。これを枕の下に入れる。

『パパ、これ、とってもいいにおいなの。よく眠れるんだって。ママにもあげたから、パパにもあげる。手げいクラブで作ったの』

元妻と暮らしている娘のののかが、今日、わざわざ持って来てくれたんだ。もちろん、送迎はいつも通り元義弟の智晴。まだ小学校低学年のののかには、ここまで来るのは遠いからな。

ふふふ。娘って、いいなぁ……今夜はいい夢見られそう。

明かりを消して、ばふん、と枕に頭をつける。うん、ラベンダーの良い香りが……って、ん? ん? んんん?

何だ、この臭いは!

俺は慌てて明かりを点け、枕を裏返した。そして、思わず天(天井だよ)を仰ぐ。ああ、なんてこった!

何でこんなところに居やがるんだ、カメムシ!
こいつのニオイときたら、ちょっとやそっとでは……。

心で泣きながら、俺は窓を全開にした。狭い寝室のドアも開け、キッチンについてる換気扇を回す。

カメムシの野郎は、窓の外に放り出してやった。

ヤツのニオイが消えるのを待ちながら、俺はののかがくれたポプリを寂しくくんくんしていた。

ああ、らぐじゅありーな夜になるはずだったのに、俺はどうしてパジャマ一枚で寒さに震えてるんだろう。

ぶぇっくしゅ!

……カメムシの臭い、ハンパねぇ……
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