第348話 金の雨、銀の雨

文字数 1,010文字

・12月15日 かむろちゃんは寒さに弱い

今日は午後からちょいと雨。

頼まれた買い物を届けに行き、ついでに少し早い年末大掃除のための模様替えを手伝いながら世間話。

「今日は、十二月にしてはなんだかあったかいですよね」

そう言った瞬間、ふと視線を感じた。頭をめぐらせると、ここんちの飼い猫のヘアレスキャット、かむろちゃんと目が合った。

なんだか、責められた気がした。

「ご、ごめんよ、かむろちゃん。やっぱり寒いよな?」

かむろちゃん、欠伸をするともこもこブランケットの中に潜り込んでしまった。

飼い主さんは「ヘアレスキャットにしてみれば、暖冬でも寒いでしょうね」と苦笑してた。





・12月16日 金の雨、銀の雨

金の雨、ふるふる。

何だっけ、これ。──ああ、別れた元妻が教えてくれたんだっけ。

銀の雨と、金の雨。金の雨は、銀杏の落ち葉だ。どんよりと曇った空から落ちる小雨が時折通り過ぎる車のヘッドライトに銀色に輝き、その光に誘われるように、鮮やかな黄葉が金色に降り注ぐ。

後から後から。いつ尽きるとも知れないほど。際限ない。放りない。いや放りないはしょーもないギャグだけどさ、聖夜じゃないし。

毎年恒例の銀杏並木の落ち葉掃き。この季節、雨の日は昼でも暗い。そして、雨を含んだ落ち葉は重い。

金の雨、ふるふる。
銀の雨、ふるふる。

初めてのデート、金色の銀杏並木。彼女が教えてくれた、アイヌの神様のうた。
今も覚えている彼女の涙は、銀の雫のようで。

あの時、俺は彼女に何て答えたんだっけ。

ああ。竹箒が重いなぁ……。





・12月22日 冬至

本日起床午前六時。窓の外はまだ暗い。

『枕草子』にて、清少納言は「冬は早朝がよろしいですよ」と書いたけども、寒いよ暗いよ冬の朝。

明日の予定では、今日より三十分早い午前五時半に起きなきゃならない。それだと今よりまだ暗いよなぁ……。そう思い、ふと気づいた。

今日って冬至じゃないか。

ということは、明日は今日よりもう少し日の出が早くなる。明後日、明々後日にはもっと早く。そして、十日も経てば「冬至十日経ちゃ阿呆でも分かる」というくらい日が長くなるんだ。

日の出が一年で一番遅いのは今日だけ。夜が一年で一番長いのも今日だけ。
それなら、そんな特別な今日を楽しまなきゃな。

よし! まだ暗い今のうちに朝飯を食べ終えて、本日最初のお仕事、グレートデンの伝さんを散歩に迎えに行こう。今朝は公園巡りコースを一緒に走るかな。

ののか、パパは今日も頑張るからね!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み