第328話 フナコシさんは七変化

文字数 1,015文字

・8月27日 フナコシさんは七変化

フェリーに乗って一等航海士だったり。
ルポライターだったり。

火災調査官だったり。
所轄刑事だったり。

このあいだは便利屋になって、最後に不明ペットのウサギ?を捕まえようとしてた。何でも屋の俺とは、同業他()と言える(者、はわざとだよ、ののか)。

そんで、今日は腕利きの外科医で逃亡者してた。

すごいなぁ、フナコシさんて。

……
……

仕事を頼まれてあちこちのお宅にお邪魔するんだけど、ついてるテレビでよく見掛けるんだ、フナコシさん。彼の出るドラマって、再放送でも人気あるよなぁ。

でもさあ、副所長の時のフナコシさん、「俺の我慢もここまでだ!」って飛び出すのはいいけど(ホントはよくないけど)、あんなに決済書類溜めたまま出掛けられたら、後に残された部下の人が困ると思うんだ。

上司のハンコが一つ無いだけで、止まってしまう仕事もあるんだよ……。





・8月28日 ミズタニさんにタマオさん、イチハラさん。

今日は谷中のお婆ちゃんがテレビでミズタニさんを見てるのを見た。
探偵で、変装してた。

このところ、ミズタニさんはすっかり右京さん役ばっかりかと思ったけど、ちょっと前に粋で鯔背(いなせ)な小料理屋の店主をやってるのも見たな。さすが役者さんだよなぁ。

谷中のお婆ちゃんはもうちょい若い頃のミズタニさんがお気に入りだそうで、衛星放送で昔のドラマが放映されるのが楽しみらしい。神父さんのシリーズが見たいそうだ。

その後、石田さんちに頼まれた届け物を持って行ったら、ちょうどタマオさんを見ていたらしい。タマオさんも清掃作業員と見せかけて女社長、とか、おばさん刑事とか、いろいろやってるよな。看護婦さんもあったっけ。

石田さんはタマオさんのファンだそうだ。田舎のお母さんに雰囲気が似ているらしい。ちなみに、おばさんで刑事だと、イチハラさんの乙女さんシリーズも捨てがたいとか。夫役のエビスさんの書いた官能小説を真面目に朗読するシーンが楽しみらしい。

……なかなか深い趣味だな。

ふう。今日は本当に涼しかった。いきなり秋になったみたいだ。グレートデンの伝さんの散歩も、いつもより早めに出かけられて良かった。猛暑だと夕方でも暑いから、どうしても遅く出掛けないといけなかったし。

「なあ、伝さん」

「おん?」

「秋だなぁ……」

「うぉんぉん」

会話(?)しながら歩く、八月の終わりの夕暮れ。曇ってるけど心は穏やかだ。
さて、この後は子供の塾のお迎えだな。先に晩飯食べておくかなぁ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み