第283話 流星群の夜は

文字数 829文字

・8月11日 二百十日の赤とんぼ

昨日の豪雨から一転、今日は晴天。

空気中の塵がさっぱりと洗い流されたからだろう、空がとてもきれいだ。暑いけど。

それにしても、こんなに晴れてきらきらしている空なのに、秋のような寂しい翳りを感じるのは何でなんだろう。──ああ、そうか。暦の上ではもうそろそろ二百十日なんだな。

今年もまた、赤とんぼの季節だなぁ、伝さん。

「うぉん?」

俺の言葉に、伝さんが不思議そうに首を傾げる。その様子が妙にがツボにはまって、俺はついつい大声で笑ってしまった。





・8月12日 猫の毛皮

昼はちょっと贅沢にボンゴレ・ビヤンコ作った。最後に牛乳入れるだけのなんちゃって料理だけど、我ながら結構美味かった。

冷やしトマトのデザート食べて、歯を磨き、いざ、小学生の学習塾送迎へ。降ったり止んだり、微妙な天気だったから、子供用の雨具も用意した。

途中、曇りや小雨程度の天気の時、よく野良猫が屯している古ぼけたガレージ前を通る。ちょっと破れてるけどアクリル樹脂で出来た屋根があるし、湿気の少ない場所だから、居心地がいいんだろうな。

それにしても。

キジトラ サバトラ 茶トラにサビ。
黒ブチ、茶ブチ、縞三毛に三毛。
豹柄、シャム柄、白、黒まだら。

基本は同じ形なのに、毛皮の柄のこのバリエーション。
……猫って、アサリに似てるよな。ひとつとして同じ柄が無いところが。





・8月13日 流星群の夜は

夜中にふと目が覚めたから、なんとなく外に出て屋上に上がってみた。ペルセウス座流星群が見えたらいいなと思って。

残念ながら、雲ってる。
空に、ドライアイスの煙流し込んだみたいに。

何年か前のやつは凄かったなぁ。数えるのも忘れるほど、ひゅんひゅん流れて落ちて来たっけ。昔読んだSF小説の冒頭みたいに……。

それにしても、涼しくなったな。一週間くらい前までは暑くてたまらなかったのが嘘みたいだ。

どっかから虫の音が聞こえる……。

さて、寝直すか。



※<俺>が昔読んだSF小説
『トリフィド時代』:ジョン・ウィンダム著
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