第184話 元は渋柿合わせ柿

文字数 497文字

十月二十四日

ご近所の元気なご老人、一枝さんに頼まれて、照明器具の付け替えをした。

といっても、当然ながら電気工事は出来ないので、古いのを差し込み口から抜いて、新しいのを差し込み、固定させただけだけど。

ついでにトイレの古い電球も交換してあげたら、奥さんが「合わせだけど……」と言いながら、柿をくれた。

柿色というよりも、黄色味がかった大きな柿。
それを食べた俺は今、海よりも深く後悔している。

甘いけど、渋いんだよ……。口の中の粘膜がざらざらになったみたいな、突っ張って縮んだみたいな、えぐいというか、何というか。

──あと、せめて三、四日くらい寝かせてから召し上がってね。

にっこり笑って教えてくれた奥さんの言葉を、軽く考えてた数分前の俺を殴ってやりたい。元は渋柿なんだから、熟成するのを待たなきゃならなかったのに……。

うがいをしても、お茶を飲んでも、コーヒーを飲んでも治らない。

渋い。渋いぞ。口の中が渋い。水を飲んでも、コーヒーを飲んでも、治りゃしない。どうすりゃいいのさこのワタシ。夜に開くほどの夢なんか持ってない。

食い意地の張った己を、呪うしかないのか……。
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