第244話 歩のある将棋は……?

文字数 1,281文字

・12月12日 こたつミカン

冬の癒しグッズ、こたつ。

この安らぎの心知った今では、今日もどこかでこたつミカン。明日もどこかでこたつミカン。

はー、落ち着く。やっぱり畳にこたつはいいなぁ。座布団代わりにしていたキティちゃんクッション(娘のののかからのプレゼントだ)を無理に二つ折りにして、枕にする。俺はこれからデーモン、いや、こたつむりに変身するのだ!

決意も堅く(?)ごそごそともっと深くこたつに潜ろうとしたら、足先に邪魔者が。居候のあいつだ。……そりゃ、こたつがあったら入るわな、猫だもの。

あ、噛みやがった。こらっ!





・12月15日 歩のある将棋は……?

昼間、後藤の爺さんの将棋の相手をした。
長考する爺さん、あまり考えずすぐ指す俺。

なのに、何であと一手で俺勝ちそうなんだろう。自分でも分からん。

爺さん、悔しそうだけど、何で勝ってんのか分からない俺には、さりげなく負けるなんて高等技術は無理。

唸る爺さん、困る俺。

あー、もう、あの駒を動かすしかないけど、動かした途端、王手なんだよなぁ……。

と、そこへ現れたのが爺さんの愛猫、ふーちゃん。
おもむろに将棋板の上にダイビング。

飛び散る駒、一応は怒ってみせつつ、うれしそうな爺さん。
……ふーちゃん、お前、猫のくせに飼い主孝行だな。


ふーちゃんは、歩ーちゃん




・12月17日 冬の青い稲妻

気づいた時には遅かったんだ。

指先から、青い火花。空に閃く稲妻のように。
同時に、ミクロな雷鳴。バシッ!

「痛ってぇ……!」

冬はこれが辛い。恐るべし、静電気。

今のは何千ボルトだったんだろう。ドアを開けるにも怯えなければならないなんて……!

だけど、開ける。開けないと外に出られないからな。外に出なけりゃ仕事が出来ない。当たり前だが。

まあいいや。さっきまで頭の隅に残ってた眠気が完全にどっか行った。今日はアフガンハウンドのランボー君の散歩の後、宇野さんちの灯油を買いに行く予定だからな。ストップ・ザ・静電気。

灯油の取り扱いにはいつも気をつけてるけど、こういうのはいくら用心してもし足りないくらいの気構えでないと危ない危ない。

油断大敵、火がぼうぼう!
って、

バチッ!

鍵でもかよ、青い稲妻!

なんでだろ? 今日着た服の、材質の組み合わせが悪いのかな。給油の時は、念入りに静電気除去シートに触れることにしよう。





・12月18日 雪の朝

朝、目が覚めたら、やけに外が明るい。おかしいな、と思って薄いカーテンをめくってみたら。

見渡す限り、白い雪に覆われていた。

きれいだ。きれいだけど、融けたら道がどろどろのぐちゃぐちゃだ。空は晴れてる。この分だと、着替えて朝飯食って外に出る頃には、融けてしまっているだろう。

子供の頃は、雪が積もったらうれしかった。……いつからかなぁ、雪がうれしくなくなったのは。

滑るし、転ぶし、靴は濡れるし、電車は遅れる、自転車にも乗れない。煩わしさばかりで、とても楽しんでなんかいられない。

大人になると、余裕がなくなる。

だけど、子供の頃の楽しい思い出が、ちょこっとだけ心の隅っこのほうを照らしてくれたりして……だから、思うほど雪が嫌いじゃないかもしれない。
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