第360話 1月21。 智晴、インフルエンザに罹る 1

文字数 587文字

元義弟の智晴が、インフルエンザに罹ったらしい。新型コロナではないのは僥倖だけど、心配だ。

──だから、今日の面会は悪いけどキャンセルさせて欲しいのよ。私はこの通り出張中だから、ののかの送り迎えが出来ないの。

電話の向こうで、元妻が溜息をつく。心配なんだろうな。彼女、あれで、弟思いだから(智晴は「弟いじめだ」っていうだろうけど)。

ののかに会えないのは寂しいけど、そういう事情なら仕方ない。気持ちを切り替えて、「じゃあ、俺が智晴の看病しに行ってくるよ」と言ったら。

──ダメ! ダメよ。あなた、ただでさえ風邪引きやすいし、インフルエンザにも弱い方でしょ。

えらく反対されてしまった……。元妻からの電話を切った後、すぐに智晴からメールが来た。「看病なんかに来られたら絶対うつるので、来ないでくださいね」だって。

確かに、俺、風邪とインフルエンザには弱いけどさぁ……。

だけど、俺だって心配だし。生意気な元義弟だけど、世話になりまくってるし。今はマスク生活だから、インフルだってとんとご無沙汰だしさ。

後で、風邪とか引いた時限定の智晴の好物、差し入れに行って来よう。ドアノブに袋を引っ掛けに行くくらいなら、いいだろ?

しかし智晴も変なやつだなぁ。普段、高級なもの食べてるくせに、熱が出てる時だけプッチンプリンと黄桃の缶詰しか食べられないなんて。桃缶はともかく、智晴とプッチンプリン……似合わない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み