第326話 夏のジャンク飯

文字数 1,033文字

・8月18日 お肉屋さんでコロッケを

今日は隣の隣の町までおつかいに。保冷剤を入れたクーラーバッグを持って、買い物代行だ。

盆休みをずらせて帰省する息子さん夫婦のために、日野さんちでは今夜すき焼きパーティーをするのだという。そのメインになる肉を買って来て欲しいと頼まれたのだ。

指定された店は、知る人ぞ知る精肉店らしい。

う。特上ロース肉が百グラム千円だって。それを一キロも買うのか……。
牛タンは百グラム八百円。こっちは五百グラム購入。双方、多目に買って冷凍しておくらしいけど、いや、すごいな。俺にはとうてい手が出ない……。

ん? 豚バラは……グラム六百円だって? うわぁ。せっかく来たんだから俺もちょっとだけ買って行こうかな、なんて思ってたけど無理。この店は比較的安いっていうけど、俺には無理。

まあいいや。コロッケ買ってこう。コロッケ。コロッケなら買える。うん。
わー、とっても美味そうだな~。

ふっ……。





・8月20日 居候猫の夢守り

悪夢に魘され目覚めた、寝苦しい丑三つ時。

胸の上で光る二つの目。……お前か! 居候の三毛猫よ。このくそ暑いのに、何でわざわざ人の身体の上に乗るんだよ。

重いし暑いしで、寝返りを打ってわざと胸の上から落としてやった。すると、今度は枕元に陣取り、じっと窓の外を見つめている。鳴き声を上げるでもなく、身動ぎもせず、ただじーっと窓の向こうを見ている。

何か、いるのか……?

……
……

怖い考えになりそうなので、何も考えずに寝ることにした。うん。気のせい、気のせい。それにしても、なんか冷えるな。エアコンはタイマーで切れてるはずだけど……。

……
……

寝る。何も考えずに寝る。おやすみ、三毛猫。





・8月23日 夏のジャンク飯

冷奴にチューブのワサビをちょっと添えて、醤油を心持ち多めに。それを箸でざっとひと混ぜ。

ぐずぐずになった元冷奴を、レンチンした熱々のご飯にたっぷり掛けて出来上がり。これぞ夏の日本のジャンク飯。

醤油をポン酢にしたり、出汁醤油にしたりと地味なバリエーションもあるけど、午前中汗かいたからなぁ。がっつり醤油いっちゃうよ。

おかずは商店街のタイムセールスで一枚三十円だったアジのフライを二匹と、屋上プランター菜園で収穫したミニトマト十個。

うん、完璧な昼飯だね!

このジャンクな奴どんぶり、なかなか美味いんだけど──皆にはナイショ。俺だけの楽しみだ。なぜって、こんなの行儀が悪いからなぁ。娘のののかにはとても見せられない。

ののか、パパは今日も頑張ってるからね!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み