第365話 ホラー映画はいかが?

文字数 714文字

4月21日。

今、俺は猛烈に迷ってる。

この依頼、断ろうかな……。

目の前に、最新ホラー映画のDVD。ジャケットが怖い。めちゃめちゃ怖い。さっきから見ないようにしてるけど、そこにあるってだけで怖い。

自分は怖いから見たくない、でも中身は詳しく知りたいって、濱中さんどんだけ身勝手なんですか。俺にこれを見て語れっていうんですか。俺だって怖いです見たくないです。

ああ、俺のパソコン古いのに、何でDVDなんか見られるんだろう。何か知らんが色々いじって見られるようにしてくれた智晴のバカ! って、親切な元義弟に八つ当たりはダメだよな……。

ああ、どうしよう。

映画なら、毎朝八時から始まるラジオ番組のあの人の語りを聞けばいいのに。土曜日の映画紹介、見なくても見たような気分になれるのに。

でも、こんな映画のあらすじなんて語ってくれないだろうなぁ……。







4月22日。
 
昨日の依頼は、結局断った。ジャケットの裏に書かれたあらすじや解説、あおり文句によると、どうもクライマックスあたりがスプラッタ・シーンの連続らしいんだよな。

血が吹き出す! 内臓が飛び出る!

……作り物とはいえ、心臓に悪い。それに──父と母のことを思い出す。二人が殺された日のことを。

もう過去のことだけど、未だに夢に見ることがある──。

というわけで、依頼者の濱中さんには知り合いのホラー映画好きを紹介することにした。『シエラデコブレの幽霊』とかいう、マニア垂涎のホラー映画の16mmを所有しているという彼なら、どんな怖い映画でも、微に入り細に渡って語り尽くしてくれるだろう。

彼の語りは、聞いた人によるとあの稲〇淳二にも勝るとも劣らないという。
頑張れ、濱中さん。

リアルにチビるかも知れないけど。
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