第165話 木の芽どきに現れる

文字数 574文字

三月十五日

隣の町に変態が現れたらしい。

「なんでも、コートの下は全裸で、後は靴と靴下だけらしいのよ」

教えてくれたのは、この四月から小学三年生になる智香ちゃんのお母さん。今日はピアノ塾への送り迎えを引き受けたんで、迎えに来たんだけど。

「そ、それは……スタンダードな変態ですね」

絶句しそうになりつつ、辛うじて言葉を搾り出した俺に、そうでしょう、と頷いてみせる智香ママ。

「しかも、目撃者の中には中学・高校の子はいないの。狙われるのは小学生の女の子ばかりなのよ。間違いないわ、ロリコンの変態なのよ」

この町ではまだ目撃例はないが、万が一を考え、PTAと町内会の有志で人気が無さそうな場所を重点的にパトロールすることになったんだという。

俺は<何でも屋>という仕事の性質上、犬の散歩とか買い物とか、とにかく外を歩くことが多いんで、ついでに不審者にも注意することを約束した。

智香ちゃんと手を繋ぎ、一緒に楽しくプリ○ュアの歌など歌いつつ、ピアノ塾に向かって歩きながら、俺はぼんやりと考えていた。

春、なんだなぁ……。

……
……

ま、とにかく! コートの中身を見せられた日には、女の子たちにはトラウマものだろうから、見つけ次第血祭り、じゃなく! すぐ警察を呼べるようにしておこう。

そうだな、後で派出所に寄っていくとするか。
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