第289話 日向の猫はハート型

文字数 1,110文字

・罰当たりめ

寝る前にパソコンで事務仕事(顧客管理とか、本日の一件ごとの仕事内容とそれに伴う必要経費及び収入を整理したりとか、色々あるんだ)した後、何となくネットサーフィンしてたら、こんなニュース見つけた。

「罰当たりめ」 盗難・破損文化財、和歌山で展示

……本当に罰当たりだなぁ。盗む時に壊されたんだろうけど、破片だけになってるのとか多い。何で壊すんだろう。意味なくないか? 

あ、「牛馬童子」の頭部、そういえば見つかったんだっけ。……へえ、盗まれたのが一昨年六月で、見つかったのが今年の八月か。バス停のベンチに置かれてたって? 何でまたそんなとこに。わざわざ返しに来たんだろうけど……。

何があったんだろうな、犯人の身に。何も無ければ返しになんて来ないだろ。

あー、今年の夏に会ったあいつのこと、思い出す。今でもあの仏像を追いかけてるんだろうな。でも、お怒りの仏像は、まだまだ捕まってはくれないんだろうなぁ。





・11月14日 日向の猫はハート型

今日は朝から天気が良くて、風も無いから日差しは暖かい。

そんな午後。野良猫が二匹、ホームセンターの駐車場の隅っこで日向ぼっこしてた。きょうだいなのか、柄が良く似てる。

黒いアスファルトが温かいらしく、二匹とも良く寝てる。何故か背中合わせ。で、気づいた。こいつらの背中の柄、合わせたら見事なハート型。

思わず吹いてしまった。

驚いたのか、さっと身を起こす二匹。とたんにハート型が割れて……これまた見事な失恋マークに、また吹いてしまった。





・11月16日 なのに何故歯を食いしばり

俺の行く道は、果てしなく遠い。

……
……

灯油タンク満タン二個ってのは、さすがに重い。ちょっと庭先から家の中へ、くらいならどうってことないけど、セルフ給油のスタンドから、五十メートル離れた顧客の家までっていうのは、な。

さすがに、腰がいかれそうだ。

大した距離じゃないと思ったけど……嗚呼、考え無しの俺の馬鹿。一個ずつにすれば良かった。今頃後悔しても、後のフェスティバルよ。ふっ。

……寒くなったなぁ。





・11月19日 思い出す、規則正しい弟の寝息

夜中にぽかりと目が覚めた。……何だか懐かしい夢を見ていたような気がする。

一度寝付くと滅多なことでは朝まで起きない俺だけど、ごくたまに、こんなふうに目が覚めてしまうことがある。そうなると、なかなか眠りに戻れない。何なんだろうな。

暗闇の中で、ふと子供の頃のことを思い出す。あのころは、夜中に目が覚めてしまっても、同じ部屋で寝ている弟の寝息を聞いているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたっけ。

弟の規則正しい寝息は、睡眠薬よりよく効いた。

懐かしいなぁ。……もう、二度と聞けないけれども。
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