第341話 祠の神様、猫を使わす?

文字数 914文字

・3月26日 祠の神様、猫を使わす?

女の人は腰を冷やしちゃいけないっていうけど。
男だってあんまり冷やさないほうがいいと思うんだ。

コンビニの前で姿勢悪くしゃがみ込んで、カップ麺やら菓子パン食べてる三人の少年たち。短いジャケットに腰パン? ていうのかな、あれ。尻が半分くらい見えてる。

見たくもないんだけど、ちょうど駐車場に車は停まってないし、道路から丸見えなんだ。

うわー、割れ目まで見えてるよ。こんな天気の良い昼間っからあいつら何やってるんだろ、春休みだからか? とか思いつつ、頼まれた買い物を積んだ自転車を押しながら歩いてたら、少年たちがいきなり悲鳴を上げて飛び上がったんで、びっくりした。

聞こえてきた会話から察するに、三人とも尻を怪我したらしく、「猫に引っ掻かれた!」とか叫んでる。なるほど、遠目だけど半ケツにあの特徴的な引っ掻き傷が見えるな。うわ、痛そう。

……だけど、俺ずっと見てたけど、周囲に猫なんかいなかったぞ。

ん? そういえば、コンビニの敷地の向こう側に、何故か野良猫のよく集まる古い祠があったっけ。祠の神さんが、「汚い尻を見せるのではないわ!」と見えない猫を遣わせたのかも……。

なーんてな。きっと腹を空かせた野良猫が、少年たちの食べ物を狙ってきたんだろう。俺が気づかなかっただけで。





・4月8日 忍ぶカメムシ

不意打ちの寒の戻り、冷えて疲れた身体には、熱めの風呂が芯からしみる。

思うさま長湯を楽しみ、ほっかほかになったあとは、さっさと布団にダイビングだ! 

暖かく心地よい眠りへの期待を胸に、手早く下着を身に着け、さあパジャマ代わりのジャージを着ようとした、その時。

なんか臭い。青臭い。
──この、草の臭い。これは!

慌ててパンツ脱いだら、恐れていた通り、中にカメムシがいた。いつの間に入りやがった! 外に洗濯物を干した時か? 取り入れて畳んだ時には見当たらなかったのに……

まだ動いているカメムシをティッシュで掴み、窓を開けて中身だけ捨てる。いや、だってさ。部屋のゴミ箱に捨てたら臭いがいつまでも残るじゃないか。

ああ、風呂から上がったら、即、布団に潜り込んで気持ちよく眠りにつくはずだったのに……。

くそぉ、カメムシの最後っ屁め!
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