第248話 銀晶石の森

文字数 1,178文字



 やって来ました。
 銀晶石の森〜

 きれいな名前の森だなぁと思ってたんだけど、ぱっと見はふつうの森。ブナとかケヤキが多い。ただ、なかに入りこむと、森のあちこちにキラキラと輝く結晶が目についた。銀色に輝く結晶体が花のような形になってる。
 これが銀晶石の原石か。キレイだなぁ。

「これを持って帰ればいいのかな?」
「そうなんじゃないですか?」
「ダルトさんたちがいない」
「何度も合成屋さんの依頼を受けてるみたいだから、きっとよく採れる場所を知ってるんでしょうね」
「そっか。もっと大量に採掘できるところがあるんだね」

 たしかに合成屋で使ってた銀晶石は、こんな形じゃなかった。もっとこう、コロコロしてたね。

「じゃあ、奥にむかっていこうか」
「モンスターが出たら、僕が魅了するから、かーくんはそのあいだにつまみ食いしてね」
「うん」

 モンスターたちは馬車のなか。
 とりあえず外にいるのは、ぽよちゃんとバランだ。ぽよちゃんはこういう自然のなかを歩くのが大好きみたいだ。

 しばらくすると、スライムが出てきた。一度に六体だ。多い……多いなぁ。
 もちろんスライムなんて、ぜんぜん敵じゃないんだけど。
 もしかして、レベルがすごく高いとか?

「ぽよちゃん。聞き耳してくれる?」
「キュイ〜」

 お耳ピクピクからの情報収集。
 けど、とくに強くもない、レベル1のスライムだ。始まりの街付近にいるやつ。

「うーん。HP3とかだよ。なんで、こんな初期の子たちが大量発生してるのかなぁ?」
「不思議ですねぇ。でも、あの無礼な騎士に言われたから特訓はします。言われっぱなしなんて悔しいですからね」

 あはは。負けず嫌いなとこも現実のままだなぁ。蘭さん。

 ああ、それにしても、幸せそうにプルプルしてるスライムたち。可愛いなぁ。目玉がね。黒いビーズみたいなんだよね。
 木刀で叩いたっけなぁ。
 あっ、あの木刀、盗んだままだ。てか、三村くんに売ってしまった。

 いきなりバランの薔薇が発動して、あたりはバラの花びらの乱舞。
 スライムたちが目をチカチカさせてる。

 蘭さんはスライムたちの前に歩いていった。

「スライムさんたち、僕といっしょに戦わない? 魔王の城につれてってあげるよ?」

 あっ! スライムたちが逃げだした。
 ちょっ、ちょっと待ってぇー!
 僕のストローチューチューがまだなんだけどー!

「あれ? 逃げちゃった」
「強すぎるんだよ! 僕たち。レベル差がありすぎると逃げるじゃん」

 例のゲームでは、そうだった。
 あまりにも強くなってから始まりの街とかで、モンスターを仲間にしようとすると、みんな戦う前に逃げだした。

「えっ? そうなの? 僕の魅了にかからないなんて、どうかしてる」
「目くらましにかかってたからね。目が見えてないんだから、魅力がわからないんじゃないの?」
「あっ、そうなのか」

 困ったな。
 これじゃ特訓にならない。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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